リード(Thomas Read)(読み)りーど(英語表記)Thomas Reid

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

リード(Thomas Read)
りーど
Thomas Reid
(1710―1796)

イギリスの哲学者。スコットランドアバディーンに生まれ、同市のマリシャル・カレッジに学び、同大学およびグラスゴー大学教授を歴任。イギリス啓蒙(けいもう)哲学の派であるスコットランド常識学派の創始者で、イギリス経験論、とくにヒュームの懐疑的帰結に反対し、常識と伝統的諸学と宗教とを擁護した。彼はまずデカルトからロックが、そしてロックからヒュームが継承した、知識の対象を心の内部の観念だとする根本前提自体を批判する。

 さらに、単純観念でなく判断を知識の基本的単位と考え、感覚作用にも判断は含まれ、イギリス経験論は知覚の論理的単位を認識発生の直接所与と混同していることを指摘する。人間には習慣でなく、本源的な常識の諸原理が共通にあり、それによって観念間の関係や外界存在への確信が与えられ、論理学、数学、形而上(けいじじょう)学、倫理学などの必然的真理が示唆されると考える。主著に『常識の原理に基づく人間精神の探究』(1764)、『人間の知力についての試論』(1785)など。

[杖下隆英 2015年7月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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