ルエダ(英語表記)Lope de Rueda

改訂新版 世界大百科事典 「ルエダ」の意味・わかりやすい解説

ルエダ
Lope de Rueda
生没年:1505?-65

スペイン劇作家ローペ・デ・ルエダとも呼ぶ。金箔職人であったが,職を捨てて劇団を組織し,座長として,また自ら役者としても活躍した。作家としては,イタリア演劇の影響の強い作品4編を残しているが,重要なのはパーソと呼ばれる短い笑劇である。これは主として幕間に上演されたが,民衆の生活をおもしろおかしく扱った写実性の強いもので,〈黄金世紀〉のエントレメス前身である。また,ここに現れる人物は,後の道化役グラシオーソ)の前身と考えられる。その意味で,ルエダこそは〈黄金世紀〉の国民演劇の基幹を形成した人物と言える。10編残っているパーソの代表的作品は《オリーブの実》(1548),《招かれた客》(1546)などである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルエダ」の意味・わかりやすい解説

ルエダ
るえだ
Lope de Rueda
(1510?―1565)

スペインの劇作家。セビーリャで生まれ、コルドバ死去。劇団の座長で役者でもあった。一座は国中を巡業し、町の広場でなりわいとして芝居を演じた。作品は当時にはまれな散文で書かれ、『メドーラ』ほかの、イタリア劇を土台にした戯曲(コメデイア)もあるが、評判を得たのは約40編の「パソ」とよばれる一幕物の小喜劇である。中心となる出し物の幕開き前か幕間(まくあい)に上演され、おもしろい対話で庶民の生活風俗を実写したこの短い笑劇は演劇史上に輝かしい足跡をとどめ、セルバンテスにも礼賛された。まだ植えてない木の実の売り値で喧嘩(けんか)する百姓夫婦を描いた『オリーブの実』(1548)は秀作で、ほかに『招待客』(1546)や『ハウハの土地』(1547)などの作品がある。

[菅 愛子

『田尻陽一訳「メドーラ」「笑劇集」他(『エウロ 翻訳西洋文学』1―7号所収・1975~78、81~83・龍谷大学)』

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朝日日本歴史人物事典 「ルエダ」の解説

ルエダ

没年:尚豊4(1624)
生年:生年不詳
スペイン人ドミニコ会士。ブルゴス山岳地方の出身。慶長9(1604)年フィリピンを経て来日,九州で活動した。同19年の伴天連追放令が発せられると潜伏。元和5(1619)年宣教師派遣を請うため侍の姿をしてマニラに赴き,その地で2冊の日本語による信心書を執筆出版した。日本への帰任途上,琉球に立ち寄り,仏僧と論争して捕らえられ,斬首され海に投げ棄てられた。ロザリオの信心厚く,「ロザリオのパードレ(司祭)」と称された。<著作>『ロザリヨの記録』『ロザリヨの経』<参考文献>Aduarte 《HistoriadelaProvinciadelSantoRosariodelaOrdendePredicadoresenFilipinas,Japo´nyChina》Ⅰ,Ⅱ

(野間一正)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルエダ」の意味・わかりやすい解説

ルエダ
Rueda, Lope de

[生]1510頃.セビリア
[没]1565. コルドバ
スペインの劇作家。巡回劇団を組織してスペイン各地を巡業,国王フェリペ2世から市井の庶民にいたるあらゆる観客から歓迎された。セルバンテスも幼年時代にセビリアで見物したという。パソ pasoと呼ばれる一幕喜劇によって,のちに現出するスペイン演劇の黄金時代の先駆となった。現在でもしばしば上演される作品に『オリーブの実』 Las aceitunasがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ルエダ」の解説

ルエダ Rueda, Juan de

?-? スペインの宣教師。
ドミニコ会士。慶長9年(1604)フィリピンをへて来日し,九州を中心に布教。ロザリオ信心を説いてロザリオのパードレ(司祭)とよばれる。19年の追放令と病気療養のためマニラにもどり,「ロザリヨの修行」「ロザリヨの記録」を執筆,出版。再度日本潜入をくわだて,1624年琉球にわたり石垣永将を教化したが,捕らえられて殉教した。

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世界大百科事典(旧版)内のルエダの言及

【スペイン演劇】より

…また彼は,劇作術を体系化・理論化しようとした最初の人物でもある。〈黄金世紀Siglo de Oro〉の国民演劇の基幹を形成したといえるのが,ローペ・デ・ルエダである。作家として,また役者としても活躍したが,当時イベリア半島を巡回していたイタリアの劇団から多くの影響を受けている。…

※「ルエダ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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