ル・コルビュジエと世界遺産(読み)るこるびゅじえとせかいいさん(英語表記)Le Corbusier and World Heritage

知恵蔵 の解説

ル・コルビュジエと世界遺産

世界遺産は、1972年にユネスコで採択された「世界遺産条約」に基づいて後世に残していくべきと指定・登録された遺跡景観総称である。その1カテゴリーである文化遺産は比較的歴史の浅い近代建築も対象とし、一国の枠を越えての登録も認められている。現在、フランス政府は20世紀モダニズムを代表する同国の建築家ル・コルビュジエの作品群の世界遺産登録準備を進めているが、生前から国際的に活躍していたル・コルビュジエの代表作は世界各地に分散している。今回候補としてリストアップされた23作品の所在地はフランスのほかスイス、ドイツベルギーインドアルゼンチン日本各国にまたがっており、その23作品の中には、日本でも唯一のル・コルビュジエ作品である国立西洋美術館も含まれている。日本の国内法では、世界遺産への推薦には重要文化財指定が必須要件であるため、文化庁では2008年1月までに指定手続きを済ませる予定。建造物の重要文化財指定には最低でも築50年という目安があるため、1959年竣工でその条件を満たしていない国立西洋美術館の指定は、国際文化交流を優先した特例措置だといえそうだ。フランス政府は、日本を始めとする関係各国の協力を得て、最短で2009年夏の世界遺産登録を目指している。

(暮沢剛巳 建築評論家 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android