ロイコチトゾーン病(読み)ロイコチトゾーンびょう(英語表記)leucocytozoonosis

改訂新版 世界大百科事典 「ロイコチトゾーン病」の意味・わかりやすい解説

ロイコチトゾーン病 (ロイコチトゾーンびょう)
leucocytozoonosis

ロイコチトゾーン属Leucocytozoonの原虫に起因する鳥類の伝染病。この原虫はマラリアコクシジウムとも近縁なもので,その発育環は三つの段階があり,鳥類の体内と媒介昆虫体内とで行われる。以下ニワトリを例に述べる。ヌカカの吸血時にニワトリの体内に侵入した胞子小体は,脾,肝,肺などの血管内皮細胞で第1代の分裂小体(シゾント)となり,この後血中から全身の臓器に運ばれて発育をつづける。この後シゾントから第2代の分裂小体(メロゾイト)が末梢血中で赤血球内の寄生状態となる。このメロゾイトは赤血球系に寄生して発育し,宿主細胞から生殖母細胞(ガメトサイト)として末梢血中に出現する。この時期に媒介昆虫で吸血され,ヌカカの中腸内で受精能をもつ雌性生殖母体と雄性生殖母体とになり,この両者が融合して,中腸上皮細胞間でオーシストを形成する。やがてこのオーシスト中に胞子小体が認められるようになり,ヌカカの唾液(だえき)腺に移行して吸血時にニワトリの体内に侵入する。

 感染すると12~13日ごろから喀血(かつけつ)したり,腹腔内出血を起こして急死する。死に至らなかったものも出血や赤血球の破壊によって貧血となり,鶏冠肉髯(にくぜん)が蒼白となり緑色便排出,また発育不良や産卵の低下をきたし,しだいに衰弱してついには死亡する。治療にはアンプロリウム,サルファキノクサリン,エソパベイトの合剤を飼料添加使用する。予防には媒介昆虫の発生源対策とニワトリヌカカ鶏舎への侵入を防ぐ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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