日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ロイター(Fritz Reuter)
ろいたー
Fritz Reuter
(1810―1874)
ドイツの小説家。シュターフェンハーゲンで市長の息子として生まれる。フランス軍による占領の時代に育つ。ロストックとイエナ両大学で法学を専攻。1833年イエナで学生組合の政治運動に関係した疑いで投獄される。36年ベルリンでは不敬罪と国家反逆罪のかどでふたたび逮捕され、一度は死刑を判決されたが30年の要塞(ようさい)禁錮刑に減刑され、40年大赦により釈放された。その後十数年間農業に従事してから、家庭教師となって各地を転々とし、農民生活の現実や地方が抱える社会問題に触れた。43歳のとき発表した低地ドイツ語による詩が予想外の成功を収め、以後アイゼナハに居を構え、方言文学の創作に専念し、優れた写実主義小説を残した。辛口のユーモアの漂う作品には、つねにプロイセンの軍国主義や封建的な地主や貴族への批判精神が横溢(おういつ)している。小説『わが農民時代より』(1862~64)が代表作。
[鈴木隆雄]