ロウバイ(読み)ろうばい

改訂新版 世界大百科事典 「ロウバイ」の意味・わかりやすい解説

ロウバイ (蠟梅)
Chimonanthus praecox (L.) Link

ウメの咲くころ,蜜蠟に似た黄色のかわいい花をつけるロウバイ科花木。落葉低木で,高さ2~4m。葉は全縁で対生する。早春,葉の展開前に他の花に先立って咲く。花被片は多数で,萼片から花弁へと連続して区別できない。内花被片は暗紫色,中片は黄色で外片は鱗片状。ソシンロウバイ(素心蠟梅)といって,内片も黄色い品種も栽植されている。中国原産で,日本には江戸時代初期に入り,18世紀の半ばころに日本あるいは中国からイギリスへ輸出され,winter sweetと呼ばれるようになったという。

 ロウバイ科はモニミア科やクスノキ科に近い木本性の科で,約4属10種を含む。ロウバイ属ChimonanthusSinocalycanthus属が中国に,花木となるクロバナロウバイ属Calycanthusが北アメリカに,Idiospermum属がオーストラリアにと,著しい隔離分布をする。壺状にへこむ花床や,植物体全体に皮層走条をもつという特異な形態を有する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロウバイ」の意味・わかりやすい解説

ロウバイ
ろうばい / 蝋梅
[学] Chimonanthus praecox (L.) Link.

ロウバイ科(APG分類:ロウバイ科)の落葉低木。中国中部原産。日本へは後水尾(ごみずのお)天皇(在位1611~1629)の時代に朝鮮半島を経て渡来した。名は、花色が蜜蝋(みつろう)に似ており、ウメと同じころに花を開くからといわれている。高さ2~3メートルの株立ちになる。葉は対生し、長卵形、長さ8~15センチメートル、先は鋭くとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)がなく、薄い革質で表面がざらつく。12月から翌年の2月、芳香のある蝋質、半透明の黄色花を葉より先に開く。萼片(がくへん)と花弁の区別がなく、外層の花被(かひ)片は淡黄色、内層は紅紫色で小さい。5~6本の雄しべと、その内側に退化雄しべがあり、雌しべは数本で壺(つぼ)状の花托(かたく)の中にある。花托はその後大きくなり、長卵形の偽果になる。中にある種子状の痩果(そうか)は濃紫褐色、長楕円(ちょうだえん)形で、有毒である。変種のソシンロウバイ(素心蝋梅)は内部の花被片まで淡黄色である。

 日当りのよい適潤地でよく育ち、移植は容易である。繁殖は接木(つぎき)、取木、実生(みしょう)、株分けによる。

小林義雄 2018年7月20日]


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