ロス(Alvin Elliot Roth)(読み)ろす(英語表記)Alvin Elliot Roth

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ロス(Alvin Elliot Roth)
ろす
Alvin Elliot Roth
(1951― )

アメリカの経済学者。ニューヨーク市生まれ。中学を中退し、コロンビア大学土曜クラスの学生となり、1971年に同大学を卒業(学位応用数学オペレーションズ・リサーチ」=OR:Operations Researchで取得)。スタンフォード大学で1973年にOR修士号、1974年に博士号(Ph.D.)を取得。イリノイ大学ピッツバーグ大学、ハーバード大学教授を経て、2012年からスタンフォード大学教授。専門はゲーム理論、実験経済学、マッチング理論、マーケット・デザイン。

 ロスは、異なる嗜好(しこう)をもつ経済主体どうしの組合せを研究するマッチング理論を実社会に応用し、臓器移植研修医配属、学校選択などで効率的な制度設計(マーケット・デザイン)に成功したことで知られる。この業績により2012年のノーベル経済学賞を受賞した。マッチング理論を築いたロイド・シャープレーとの共同受賞である。

 1960~1970年代にシャープレーが構築したマッチング理論を1980年代に実社会に適用。1984年の論文「The Evolution of The Labor Market for Medical Interns and Residents:A Case Study in Game Theory」で研修医のインターン先病院への割り振りにマッチング理論が使われていることを発見し、1999年の論文「The Redesign of THe Matching Market for American Physicians」で、より精緻(せいち)に制度を設計した。小中高校生の進学先の選択、臓器ドナーと患者の組合せなど、限られた資源をむだなく配分するマッチング理論を実社会に適用するブーム牽引(けんいん)役となった。こうした実証実験を通じ、市場が存在しなかったり、市場機能がうまく働かなかったりした場合でも、高効率・公平で不満を解消し、全体の効用(満足度)が高くなるように制度設計するマーケット・デザインを発展させた。著書に『フー・ゲッツ・ホワット――マッチメイキングとマーケットデザインの経済学』Who Gets What - and WhyThe New Economics of Matchmaking and Market Design(2014)などがある。

[矢野 武 2021年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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