ロストー,W.W.(読み)ろすとー

世界大百科事典(旧版)内のロストー,W.W.の言及

【経済史学】より

…従来経済史研究に無関心だった近代経済学の分野で,経済成長論の一環として,独自な経済発展段階説が提唱されたのもその現れであろう。とくに〈伝統的社会→離陸のための前提諸条件の形成期→離陸(テイク・オフ)→成熟への前進→高度大衆消費時代〉というW.W.ロストーの図式は有名で,以後,〈テイク・オフ〉(産業革命)を可能にする経済条件の計量的な把握を中心に,国民所得等経済諸指標の推移の体系的分析をつうじて経済発展の規則性を解明する経済発展論が活発になっている。
【経済史学の多様化】
 ところで近年,経済史学は研究対象・研究方法ともに多様化の傾向をみせている。…

【経済発展】より

…原始共同体から奴隷制,封建制,資本制をへて社会主義に至る社会構成体の推移のなかに世界史の法則性を見いだそうとするものであった。 近年,ロストーWalt Whitman Rostow(1916‐ )は《経済成長の諸段階》(1960)で,生産力発展と工業化を軸に,伝統社会から離陸(テイク・オフ)によって高度大衆消費社会に及ぶ5段階を数えたが,アメリカ型大量消費を究極におく戦略的性格が濃く,離陸の指標などの数量的把握に特徴がある。 このような単線型の段階論を批判して,ガーシェンクロンAlexander Gerschenkron(1904‐78)は19世紀ヨーロッパ工業史の分析から,先進国と後進国が同時に存在する場合,後進国は前者とは異なった発展をたどらざるをえないことを明らかにした。…

【工業化】より

…この意味での工業化とは,産業資本,ことに固定資本の強度の蓄積,人口の激増,労働力の第2次産業への集中,第2次産業における技術革新の進行,そして何よりも1人当り国民所得の持続的成長の開始などによって特徴づけられる。 持続的経済成長の開始という意味での工業化論をもっともよく理論化したのはW.W.ロストーである。彼によれば,伝統的・静態的な農業社会のなかで,農業改良(〈農業革命〉)や商業資本の蓄積など〈先行条件〉が整備されてくると,やがて決定的な転換点である〈離陸(テイク・オフtake‐off)〉を迎える。…

【産業革命】より

… しかし,さらに20世紀後半,南北問題が深刻になると,産業革命の問題は〈工業化〉の問題として,世界史的な視野の中におかれはじめる。工業化,つまり農業社会から工業社会への移行という概念は,ロストーWalt Whitman Rostow以来,〈近代的経済成長〉つまり〈1人当り国民所得の持続的成長〉の開始の問題と結びつけられることが多くなっている。しかし,1人当り国民所得の成長を指標として,各国が同一の発展段階を次々とたどる――とくに各国の産業革命期にあたる,決定的な〈離陸take‐off〉の段階を過ぎた国は,〈持続的成長〉をもつ国,つまり開発された北の国になる――というロストー的発想では,工業化や〈持続的成長の開始〉は要するに〈各国産業革命〉の概念の言換えにすぎないともいえる。…

【政治発展論】より

…この種の量的評価を基礎に,発展を段階的にとらえる思考様式がさまざまに展開された。その代表例として,ロストーW.W.Rostow(1916‐ )の経済成長五段階論があげられる。そこでは,伝統的社会→離陸準備期→離陸期→成熟への前進期→高度大衆消費期の5段階が識別されている。…

【テイク・オフ】より

…テイク・オフとは,飛行機が滑走路でしだいに速度を速めながら前進するうちに,ある速度にまで達すると離陸して上昇を続けるように,伝統的な社会もその変化のモメンタムがある水準に達すると急速に近代化を始めることをあらわすためにアメリカの経済学者ロストーW.W.Rostow(1916‐ )が用いた言葉である。〈離陸〉と訳される。…

【不均等発展の法則】より

…以上のようなレーニンの認識と比較すると,K.マルクスは《資本論》第1巻の序文にみられるように,各国の資本主義の発展段階の差異が時の経過とともに解消され同質化するとみていたと考えられる。また近年の有力な発展段階論の唱道者W.W.ロストーは,各国の経済発展・成長の不均等性はニュートン力学を社会的に採り入れることができるかどうかにあるとし,テイク・オフ(離陸)を実現した社会は工業化を妨げる困難を克服したのであり基軸工業の交代を経て〈高度大衆消費社会〉に至ると考え,不均等発展の問題は〈離陸〉のできない〈伝統的社会〉と工業社会の同時併存にあると考えている。【野口 建彦】。…

※「ロストー,W.W.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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