ロセッティ(英語表記)Dante Gabriel Rossetti

精選版 日本国語大辞典 「ロセッティ」の意味・読み・例文・類語

ロセッティ

(Dante Gabriel Rossetti ダンテ=ガブリエル━) イギリスの画家、詩人。ラファエル前派を結成。絵画はダンテ・聖書・神話に主題をとり、ロマンチックで神秘的な情感をたたえる。詩は古民謡を生かしダンテの影響が強い。(一八二八‐八二

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デジタル大辞泉 「ロセッティ」の意味・読み・例文・類語

ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti)

[1828~1882]英国の画家・詩人。ラファエル前派の結成に参加。伝説や神話、聖書などに題材をとった作品を多く残した。詩集「歌謡とソネット」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ロセッティ」の意味・わかりやすい解説

ロセッティ
Dante Gabriel Rossetti
生没年:1828-82

イギリスの画家,詩人。ナポリから政治亡命した詩人を父に,ロンドンで生まれる。1845年,ローヤル・アカデミー・スクールに入学。ここで知りあったJ.E.ミレーやW.H.ハントらとともに,48年,芸術革新を唱える〈ラファエル前派〉を結成。その機関誌《ジャームThe Germ》に,詩や散文を発表し,詩人としての活動もはじめた。グループは数年後に離散するが,ラファエル前派の影響を受けて育った,後の世代の中心的人物になる。絵画の技量はとくに優れたものではないが,聖書主題あるいはダンテやシェークスピアからとった中世風のロマン的主題を,妻エリザベスや晩年にはW.モリス夫人ジェーンをモデルに耽美的に描いた。妻(1862没)の遺体とともに埋葬した詩稿を69年発掘し,翌年《詩集》を刊行。《詩集》の〈天国の乙女〉は地上の恋人と死んだ女の霊的交流をえがき,《バラッドとソネット》(1881)には〈白い船〉〈王の悲劇〉のほかに,名高い連作ソネット集〈生命の家The House of Life〉の大部分を収めた。そこには,絵画における理想の女性像である妻およびジェーンとの愛の葛藤に悩み精神的救済をもとめる詩人の姿が浮彫になっている。〈おれの生涯の空白の日々--いまいずこにある〉と嘆くくだりは印象的である。晩年,精神的・肉体的障害に苦しみ麻酔剤クロラールの中毒にかかり,多彩な生涯をとじた。日本では蒲原有明独絃哀歌》(1903)や上田敏《海潮音》(1905)にロセッティのソネット数編が訳され,有明の恋のよろこびと恐れを観念的・象徴的にうたう詩風には〈生命の家〉の影響がみられる。
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ロセッティ
Christina Georgina Rossetti
生没年:1830-94

イギリスの女流詩人,童謡作家。兄ダンテ・ゲイブリエルとともにラファエル前派に属した。英国国教会の信者で,宗教上の違いから婚約者と別れ一生独身だった。その詩は初期の甘美な詩から,愛の別れ,帰らぬ青春,死をうたい現実の空しさをこえて,永遠の安息を模索する神秘的宗教詩へ高まってゆく。《妖精の市》(1862)は純真な少女の誘惑と信仰の葛藤を描き,このテーマは《王子の行列》(1866)にも生きているが,繊細で哀切な感情の抒情詩こそ,彼女の変わらぬ特質であった。
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百科事典マイペディア 「ロセッティ」の意味・わかりやすい解説

ロセッティ

英国の画家,詩人。イタリアの政治亡命者を父としてロンドンに生まれた。まず画家として知られ,1848年アカデミズムに対抗して芸術の革新を唱えるラファエル前派を結成,機関誌《ジャームThe Germ(萌芽)》を発刊。早くから詩作もし,1862年に死んだ妻の棺とともに詩稿を埋めたが,後に発掘し《詩集》(1870年)として出版した。絵画の代表作に《聖告》(1850年,テート・ギャラリー蔵),《ベアタ・ベアトリクス》(1863年,同ギャラリー蔵)などがある。
→関連項目パトモアバーン・ジョーンズハントフィッツジェラルドホイッスラーミレーモリスロセッティ

ロセッティ

英国の女性詩人。D.G.ロセッティの妹。《王子の旅》(1866年),《行列》(1881年),《新詩集》(1896年)など。童謡風な幻想詩もあるが,特に宗教詩にすぐれている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロセッティ」の意味・わかりやすい解説

ロセッティ
Rossetti, Dante Gabriel

[生]1828.5.12. ロンドン
[没]1882.4.9. バーチントンオンシー
イギリスの詩人,画家。ロセッティ兄妹の長兄。イタリア人亡命者 G.ロセッティの子に生れ,美術学校に学んだのち,F.M.ブラウンの指導を受けた。 1848年ラファエル前派の運動を興し,その中心人物として活躍した。 50年代には神話や聖書を主題とした水彩画や素描を制作したが,彼の装飾的で神秘的な絵画は,世紀末の象徴主義,アール・ヌーボーなどに多大の影響を与えた。また絵のほか,詩作にも早くから手を染めたが,作風は情熱,色彩感,中世的な主題と雰囲気などを特色とし,神秘的であるとともに肉感的な詩境を開拓した。 70年の詩集に収められたソネット連作『生命の家』 The House of Lifeは,愛における霊と肉の関係を追求した力作であるが,あまりにも官能的な詩風により「肉体派」と呼ばれた。ほかに『バラッドとソネット』 Ballads and Sonnets (81) など。

ロセッティ
Rossetti, Christina Georgina

[生]1830.12.5. ロンドン
[没]1894.12.29. ロンドン
イギリスの女流詩人。ロセッティ兄妹の末妹。処女詩集『妖魔の市』 Goblin Market and Other Poems (1862) でラファエル前派の作風を示し,その後『王子の旅』 Prince's Progress (66) ,『歌の本』 Sing-Song:a Nursery Rhyme Book (72) ,『新作詩集』 New Poems (96) などを発表。洗練された用語,確実な韻律法,温雅な情感がつくり出す詩境は,神秘的,宗教的な雰囲気を漂わせ,また長兄 D.G.ロセッティと共通の色彩感や中世的要素が顕著で,イギリス女流詩人の最高峰に連なるもの。生涯に2度,信仰上の理由で結婚をあきらめ,恋愛詩の多くは愛の挫折の記録である。

ロセッティ
Rossetti, Gabriele Pasquale Giuseppe

[生]1783.2.28. バスト
[没]1854.4.26. ロンドン
イタリアの詩人。 D.G.ロセッティらの父。ナポレオンが擁立したナポリ政府に反対して暴動に加わり,1824年ロンドンに亡命した。ダンテの作品を予言と啓示の書と解する『神曲の分析的解釈』 Commento analitico alla Divina Commedia (全6巻,うち1,2巻は 1825刊) は G.パスコリらに影響を与えた。ほかに,アルカディア派を思わせる流麗なリズムと多彩なイメージの『詩集』 Versi (47) など。

ロセッティ
Rossetti, William Michael

[生]1829.9.25. ロンドン
[没]1919.2.5. ロンドン
イギリスの文芸・美術評論家。ロセッティ兄妹の次兄。生涯,税務局の官吏をつとめた。ラファエル前派の一員として機関誌『ジャーム (萌芽) 』 The Germを編集。『現代美術』 Fine Art,Chiefly Contemporary (1867) ,『キーツ伝』 Life of Keats (87) などのほか,ブレークの詩集の編纂 (74) ,ホイットマンの紹介で知られ,またダンテ『神曲』地獄編の韻文訳がある。

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