ロッシュ(読み)Roches,Le´on

精選版 日本国語大辞典 「ロッシュ」の意味・読み・例文・類語

ロッシュ

(Léon Roches レオン━) フランス外交官。一八六四年(元治元)駐日公使として来日。横須賀製鉄所の建設、兵器・軍需品の輸入、兵制改革の献策などで江戸幕府を援助し、薩長両藩を支持するイギリス公使パークスと対立した。大政奉還後も徳川慶喜を支持。六八年(明治元)帰国。(一八〇九‐一九〇一

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デジタル大辞泉 「ロッシュ」の意味・読み・例文・類語

ロッシュ(Léon Roche)

[1809~1901]フランスの外交官。1864年(元治元)駐日公使として来日。幕府を支持して積極的な対日政策を推進し、イギリス公使パークスと対立。軍制改革などに尽力したが、本国の対日政策変更のため、1868年(明治元)帰国。

ロッシュ(Loches)

ロシュ

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朝日日本歴史人物事典 「ロッシュ」の解説

ロッシュ

没年:1901.6.26(1901.6.26)
生年:1809.9.27
幕末維新期のフランスの外交官。日本では「ロセス」と表記された。グルノーブルに生まれる。1828年バカロレア(大学入学資格試験)に合格,グルノーブル大学に入学するが,半年で退学。32年アルジェの遠征隊に勤務していた父親に呼び寄せられ,まずアラビア語を勉強,やがて通訳官に任命された。アフリカ軍参謀本部の通訳官長を経て,49年に軍籍を離れ,タンジェ総領事,57年チュニス領事を歴任した。 元治1年3月22日(1864年4月27日)初代駐日公使ベルクールの後任として横浜に着任,日本語にたけた宣教師カションを公使館通訳官に採用して対日政策,特に江戸幕府への援助政策を積極的に展開した。ロッシュは幕府を開国派とみなす一方で,諸藩が攘夷政策をとって幕府から離反していく傾向を危惧,雄藩への接近を企てるイギリス公使パークスと激しく対立した。軍事力の増強に努める幕府から製鉄所(造船所)建設の要請を受けたロッシュはまずこれを援助,慶応1(1865)年2月横須賀製鉄所の工事をすべてフランスが請け負う契約が成立した。続いて大砲の譲渡,横浜仏語伝習所の設置,600万ドル借款契約および軍事使節団派遣契約の成立など幕府援助政策が最高潮に達しようとしていた1866年9月,ロッシュの支援者であった外務大臣リュイスが更迭され,新外相ムスティエは,67年5月,いままでの幕府支持政策の転換を訓令するに至った。これに対しロッシュは猛烈に反発,ロッシュの召還は時間の問題となった。しかしこの間の幕府との政治的緊密化は日仏貿易を著しく発展させ,64~66年の貿易輸出はイギリスに次いで第2位に躍進,特に生糸と蚕種の輸出に占める割合は大きく,マルセイユへの生糸の直輸出も実現した。68年2月18日付の帰国命令に接し,明治1年5月4日(同年6月23日)帰国した。<参考文献>宮本又次「レオン・ロシュ小伝」(『経済史研究』13巻1号),石井孝明治維新の国際的環境

(内海孝)

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改訂新版 世界大百科事典 「ロッシュ」の意味・わかりやすい解説

ロッシュ
Léon Roches
生没年:1809-1901

フランスの外交官,駐日フランス公使。グルノーブルに生まれ,1828年バカロレア取得後グルノーブル大学に入学したが6ヵ月で退学。32年アルジェリアに渡りアラビア語を学んだばかりかイスラム教徒となり,Si Omar ben Roucheと改名,アルジェリアを治めるアブデル・カデルの側近となった。のちフランス軍の通訳官となり,49年タンジールの領事に任命されるまで軍籍にあった。57年在チュニス総領事,代理公使となり,1864年(元治1)56歳で全権公使として江戸に赴任した。長州藩に対して強行論を唱えるイギリス公使オールコックと対立し幕府に接近,初代フランス公使ベルクールと意見が合わず帰国していたメルメ・ド・カションを起用して幕府を援助,横須賀製鉄所,横浜フランス語学校を開かせたり軍制改革に助力したりした。王政復古に当たっては徳川慶喜に軍資・武器の提供を申し出て再挙を勧め断られた。68年(明治1)帰国命令を受けフランスに戻り再び公職には就かず,32年間のイスラム世界での生活の回顧録を84年に出版した。その後,日本での生活の回顧録も準備したが完成せず,ニースで没した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロッシュ」の意味・わかりやすい解説

ロッシュ
Roches, Léon

[生]1809.9.27. グルノーブル
[没]1901. ニース
幕末の駐日フランス公使。グルノーブル大学中退後,アルジェリアで農園を経営していた父のもとに行き,1836年アフリカ駐屯軍通訳官。 49年タンジェ (タンジール) 総領事。 57年チュニス総領事兼代理公使。元治1 (1864) 年駐日全権公使として来日,積極的な幕府援助政策を展開し,本国経済界の代表者と幕府の間に日仏合同商社設立契約を成立させるよう斡旋した。経済的,軍事的援助を幕府に約束するとともに,将軍徳川慶喜とも数回にわたって会見し,内政改革に助言を与えるなど,幕府による近代化政策の顧問として活躍。諸藩への接近を企てるイギリス側と対抗したが,幕府の瓦解で失脚。慶応4 (68) 年辞任,帰国した。

ロッシュ
Roche, Denis

[生]1937
フランスの詩人,小説家。雑誌『テル・ケル』に拠り,プレネと並んでこの派の詩的立場を代表する。詩集『散文詩全集』 Récits complets (1963) ,『悪魔エロス』 Éros énergumène (68) がある。『損ね書き』 Le Mécrit (72) を最後に詩作をやめ,小説などを手がける。ほかに,ミショー,カンディンスキー,マリノフスキーに関する評論など。

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百科事典マイペディア 「ロッシュ」の意味・わかりやすい解説

ロッシュ

幕末の駐日フランス公使。1864年初代公使ベルクールに代わって来日。横須賀製鉄所建設工事を請け負い,幕臣の教育のために横浜仏語学校を設立,将軍徳川慶喜に幕政改革を勧めた。英国公使オールコックパークスらと対抗,江戸幕府をたすけた。本国の政策転換により1868年帰国。
→関連項目堺事件

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ロッシュ」の解説

ロッシュ
Léon Roches

1809.9.27~1900.6.23?

幕末期の駐日フランス公使。グルノーブル大学中退後,父親のいるアルジェリアに渡り,アフリカ駐屯軍の通訳官となる。アラブの風俗・習慣・言語に精通し,一時アブデル・カデルの顧問も勤めた。1846年その活躍が認められて外交官職に転じ,トリエステ,トリポリ,チュニスの各領事・総領事などを勤めたあと,64年(元治元)ベルクールの後任として来日。横須賀製鉄所建設,横浜仏語伝習所設立,幕府軍の三兵教練のためフランスから技師や軍人を招聘するのに尽力し,幕府を積極的に支援した。しかし召還命令をうけ,幕府崩壊後の68年(明治元)6月帰国。

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旺文社日本史事典 三訂版 「ロッシュ」の解説

ロッシュ
Léon Roches

1809〜1901
幕末,フランスの外交官
1864年駐日公使として来日。イギリスに対抗して幕府を支援。横須賀製鉄所の建設,武器・軍需品の供給,第2次長州征討に協力し,徳川慶喜 (よしのぶ) に幕政改革を進言したが,フランスの優位を確立できなかった。鳥羽・伏見の戦いの後,慶喜に再挙をすすめたが拒否され,幕府の倒壊をみて'68年帰国。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ロッシュ」の解説

ロッシュ Roches, Léon

1809-1901 フランスの外交官。
1809年9月27日生まれ。元治(げんじ)元年(1864)駐日公使として来日。薩長支持のイギリスに対抗,江戸幕府を援助し横須賀製鉄所の建設にあたり,横浜仏語伝習所を創立した。慶応4年帰国。1901年6月26日死去。91歳。グルノーブル出身。グルノーブル大中退。

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世界大百科事典(旧版)内のロッシュの言及

【フランス】より

…さらにアジアでは,中国への進出の狙いをこめて1858年に始まったインドシナへの介入は,87年のフランス領インドシナ連邦の成立をもって確固たるものとなった。この1858年は,日本との間に日仏修好通商条約が結ばれた年でもあり,ほどなく駐日公使ロッシュを通じての幕末政局への介入が始まることになる。こうして,19世紀後半を通じて形成された植民地帝国は,第2次大戦後まで維持され,戦後その独立をめぐり,第1次インドシナ戦争(1946‐54),アルジェリア戦争(1954‐62)と,長期にわたる植民地戦争の泥沼に足をとられることとなった。…

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