ロンドン(Jack London)(読み)ろんどん(英語表記)Jack London

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ロンドン(Jack London)
ろんどん
Jack London
(1876―1916)

アメリカの小説家。占星術師私生児としてサンフランシスコに生まれる。無軌道な少年時代ののち、アザラシ狩り船に乗り日本にも立ち寄る。帰国後、自国カナダを放浪し、カリフォルニア大学に一時期在学、クロンダイク地方のゴールド・ラッシュに加わり、ついで新聞記者となる。日露戦争時、新聞社特派員として東京を経て満州(中国東北部)へ渡る。その間H・スペンサー、ダーウィン、マルクスらの著作に触れ、しだいに社会主義に傾倒した。一方、創作活動に努め、1900年、クロンダイク地方の体験を基に短編集『狼(おおかみ)の子』で文名を高める。以来流行作家として活躍、カリフォルニアに邸宅を構え、50冊に及ぶ小説、評論をものにし、一時名声と富をほしいままにする。しかし、世俗的欲望と己の主義の相克に悩み、1916年11月22日自殺を遂げた。おもな作品に、犬を主人公に、適者生存の社会を描く『荒野の呼び声』(1903)、これと対をなす『白い牙(きば)』(1906)、超人的船長を描く『海狼(かいろう)』(1904)、プロボクサーを描く『試合』(1905)、資本家によるファッショ化をつく一種の未来小説『鉄のかかと』(1908)、自伝的な『マーティン・イーデン』(1909)、ストライキを扱った『月の渓谷』(1913)、短編集『生命の愛』(1907)、評論集『階級闘争』(1905)、ロンドン貧民街の記録『どん底の人々』(1903)、自伝『ジョン・バーリコーン』(1913)などがある。

[板津由基郷]

『アービング・ストーン著、橋本福夫訳『馬に乗った水夫――大いなる狩人、ジャック・ロンドン』(1968・早川書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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