ワクチン忌避(読み)わくちんきひ

知恵蔵の解説

ワクチンの有効性・安全性に疑いを持ち、ワクチンの接種を控えること。
予防接種を受けられる環境であるにもかかわらず接種を拒否する一部の人がいることにより、ワクチンで防げるはしか(麻疹)や百日咳(ひゃくにちぜき)などの流行が起こり、問題となっている。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などで喧伝(けんでん)されている「ワクチンは危険」「効果がない」「製薬企業の陰謀」などといった情報や、ワクチン拒否を勧めている医師の本を妄信し、ワクチンに対する誤った認識を持つ人が増えていることが原因だと考えられている。
ワクチンは、個人が感染症にかかることを防ぐと共に、集団全体の免疫率を上げることで、感染リスクの高い個人への感染の確率を下げるという意義も持つ。例えば、予防接種を受けても免疫を取得できない人、高齢者など免疫が減弱した人、病気の治療などにより生ウイルスワクチンの接種を受けられない人は、ワクチン接種により感染を予防することができない。そのため集団の中で疾患を発生させないことが、感染リスクの高い人を疾患から守ることになる。
ワクチン忌避とは、そうした全体的な効果よりも、ワクチンによる副反応といった個別の危険性を重大視する考え方である。
「排除された感染症のワクチンを接種する必要はない」という意見もあるが、2015年からはしか排除国として世界保健機構(WHO)に認定されていた日本で、19年にはしかが流行した。
一方、海外でもはしかは多くの国で流行している。ヨーロッパではイギリスを含む4カ国が排除国の認定を喪失している。また、ニュージーランドでは2019年9月30日時点でアウトブレイクが発生中である。医療水準の高いこれらの地域での流行も、ワクチンを接種しない人が増えていることが原因だと指摘されている。
「ワクチン忌避」は、19年にWHOが発表した「世界の健康に対する10の脅威」の一つとして挙げられた。
「ワクチン接種は最も費用対効果の高い病気を回避する方法の一つである」と、WHOは説明している。ワクチン接種により年間200~300万人が死亡を免れている。
WHOは世界全体のワクチン接種率が向上すれば、更に150万人の死亡を回避することができると推計している。

(星野美穂 フリーライター/2020年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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