ワレカラ(読み)われから(英語表記)skeleton shrimp

改訂新版 世界大百科事典 「ワレカラ」の意味・わかりやすい解説

ワレカラ (割殻)
skeleton shrimp
fairy shrimp

端脚目ワレカラ亜目Caprellidea甲殻類総称であり,ワレカラ科Caprellidaeに属するものを呼ぶことが多い。体は細長く小型で,海藻コケムシ類などの間にふつうに見られる。シャクトリムシに似たしかたで運動および歩行をする。泳ぐときはボウフラのように体を振って泳ぐ。この名は乾燥させると体の殻が割れることに由来するという。〈あまのかるもにすむむしの我からとねをこそなかめ世をばうらみじ〉(《古今集》)と古く歌にも詠まれている。頭部は第1,2胸節と融着しており,胸部は見かけ上6節からなる。腹部は退化し,痕跡的な小突起となり,胸節の後端に着いている。2対の顎脚(がつきやく)は大きさが異なり鎌状となっている。第4,5胸節はふつう無肢で,葉状えらと,成雌では覆卵葉をもつ。第6~8胸節には先端がかぎ形をしている歩脚がある。

 ワレカラ亜目には次の2科を含み,250種以上が知られている。ワレカラ科は日本からは約60種知られる。体が細長い円筒状をしており,第1,2触角はともによく発達している。マルエラワレカラCaprella acutifrons体長1~3cm。えらは円形。体色はすむ海藻などで異なる。浅海の海藻や定置網漁網などに着き,ふつうに見られる。クビナガワレカラC.aequilibraは体長1cm内外。世界的に広く分布し,日本各地で見られる。オオワレカラC.kroeyeriは北方系で,ワレカラ中最大,体長6cmくらいになる。ワレカラモドキProtella gracilisは浅海のヒドロ虫や海藻の間にすみ,体長2cmくらい。クジラジラミ科では,体は背腹に扁平で,短く,第1触角だけが発達しており,第2触角は退化している。クジラジラミ属Cyamusの体長は1cm前後で,各種のクジラ類皮膚に着き,寄生している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワレカラ」の意味・わかりやすい解説

ワレカラ
われから / 破殻
skeleton shrimp

節足動物門甲殻綱端脚(たんきゃく)目ワレカラ科Caprellidaeに属する種類の総称。広義にはワレカラ亜目Caprellideaに属する種類の総称で、500種以上知られている。すべて海産で、とくに岩礁の海藻や定置網などについていることが多い。体長5~50ミリメートルで、一般に10ミリメートル内外。細長い円筒形で、7胸節のうち第1節は頭部と癒合しているため、胸部は見かけ上6節からなる。腹部は著しく退化して胸節に続く小さな突起にすぎない。第1、第2顎脚(がっきゃく)にはさみをもつが、第2顎脚が強大で、種の分類形質となる。後ろ3対の歩脚はかならず存在するが、前2対はないことが多く、あっても退化的。第2、第3胸節に葉状のえらが1対ずつある。海藻の間では体形が擬態となっており、体色も海藻に似る。もっとも多いのはマルエラワレカラCaprella acutifronsとトゲワレカラC. scauraで、本州北部から北海道には体長60ミリメートルになるオオワレカラC. kroyeriが普通にみられる。

[武田正倫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワレカラ」の意味・わかりやすい解説

ワレカラ
skeleton shrimp

軟甲綱端脚目ワレカラ科 Caprellidaeに属する種類の総称。ただし,端脚目ワレカラ亜目 Caprellideaを総称してワレカラと呼ぶこともある。体長 0.5~3cm。小さな頭部,細長い 7胸節,小さな 6腹節からなる。第1胸脚,第2胸脚は鋏をもつ顎脚となる。一般に第3胸脚,第4胸脚を欠き,代わりに葉状のをもつ。後 3対の脚で海藻などにしがみついて生活するが,シャクガ(尺取虫)を思わせる姿が擬態となって見つけにくい。潮間帯や浅海の藻場に多いが,定置網などにもつき,幼魚類の重要な餌となる。(→甲殻類節足動物端脚類軟甲類

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百科事典マイペディア 「ワレカラ」の意味・わかりやすい解説

ワレカラ

端脚目ワレカラ科の甲殻類の総称。体は非常に細長く円筒形。第1触角は長く体長の半分ほど。体長は普通2cm内外だが,最大種のオオワレカラでは6cmに達する。体色は褐色のものが多い。すべて海生で日本各地の沿岸に分布。一般に藻類など付着性生物の間や泥中にすみ,シャクトリムシに似た運動をして移動。海藻などを食べる。

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