精選版 日本国語大辞典 「一・壱」の意味・読み・例文・類語
いち【一・壱】
[1] 〘名〙
① 数の名。最初の基本数。また、いくつかに分けたものの一つ。ひとつ。ひと。いつ。
② 物事の始め。最初。第一番目。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「父母ふみを一にてよむ」
③ 最もすぐれていること。最も大事なこと。また、そのもの。第一。最上。一等。
※霊異記(810‐824)中「一を得て運を撫で」
※枕(10C終)一〇一「すべて人に一に思はれずは、なににかはせん」
④ (名詞の上について) 多くの中の不確定な一つをさす。ある。
※日の出前(1946)〈太宰治〉「東京の一家庭に起った異常な事件である」
⑤ 極端なこと。はなはだしいこと。
⑥ 三味線の糸の中の最も太いもの。いちのいと。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「年わすれかわれぬ時分一が切れ」
⑦ 髷(まげ)などの、元結(もとゆい)でくくったところから、後方に出た部分。
⑧ 酒の一合。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)五「紅葉(もみぢ)おろしで一(イチ)よ」
⑨ 「いちにち(一日)」の略。特に八月一日(八朔(はっさく))。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)三「一(いチ)はのがれたが十五是天命」
⑩ さいころの一の目のこと。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「一の裏は六、悪の裏は善也」
⑪ 笙(しょう)の管名。盤渉(ばんしき)の音律を出すもの。
※足利本論語抄(16C)公冶長第五「孔子七十余国を遍歴するに居レ陳三年そ一久しいそ」
※虎明本狂言・祇園(室町末‐近世初)「いちほねおりて見えけるはいかなる人ぞ」
いつ【一・壱】
〘名〙
① 数の名。最初の基本数。また、いくつかに分けたものの一つ。「も」を伴って、少しも、の意にも用いる。ひとつ。いち。
※史記抄(1477)六「抜山之力蓋世之気一も用に不レ立ぞ」
② 同じこと。同様。同一。「軌を一にする」
※史記抄(1477)五「本注の写本は、いつも伐と代とをば一にするほどに」
③ 一つに集中すること。合同。統一。「力を一にする」
※教育に関する勅語‐明治二三年(1890)一〇月三〇日「我が臣民克(よ)く忠に克く孝に、億兆心を一にして」
④ 一方。あるもの。別のもの。
※妾の半生涯(1904)〈福田英子〉二「民間には義士烈婦ありて、国辱をそそぎたりとて、大に外交政略に関する而已(のみ)ならず、一(イツ)は以て内政府を改良するの好手段たり、一挙両得の策なり」
※文学史的空白時代(1928)〈大宅壮一〉三「一(イツ)を良心的と讚へ、他を非良心的と貶(けな)したが」
⑤ (「に」を伴って副詞的に用いる) もっぱら。ひとえに。「いつに日頃の研究心のたまものです」「成否はいつにかかってここにある」 〔礼記‐礼運〕
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