一色・一式(読み)いっしき

精選版 日本国語大辞典 「一色・一式」の意味・読み・例文・類語

いっ‐しき【一色・一式】

〘名〙
① ほかの色をまじえない一つの色。また、同じ色。ひといろ。いっしょく。
※山槐記‐永暦二年(1161)四月二五日「小袴者、ふくさ紫に染たる一色着也」
読本・椿説弓張月(1807‐11)前「蒼海は天と一色(イッシキ)にして」
② 一つの物事。一つの種類。一種類。また、同じ種類。同種類。一品(ひとしな)
※霊異記(810‐824)中「彼(そ)の衆人皆一色の容(かたち)を作(な)す」
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「絵を描かする。白鷺(しらさぎ)の一色(シキ)を望む」
④ (現在は「一式」と表記する) 鎧(よろい)や道具の一揃い。一支具。一縮。転じて、ある物事のすべて。
※延慶本平家(1309‐10)一本「鎧草摺長なる一色ささめかして」
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「夫(をっと)一式(シキ)の世話は女房の役目である」
⑤ ひとりだけで何かを行なうこと。また、自分ひとりだけの物事。
※大徳寺黄梅院文書‐天正一一年(1583)二月五日・中村六郎左衛門尉田地売券「此田地者一色也」
⑥ (一式) ある物事に偏ること。一方。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「葉桜は呑む一式のやから出る」
華道で、一種類の草木をいけること。
立花大全(1683)一「松の一色(イッシキ)ばかり、外の色どりすくなければ」
⑧ 仏語。相対立した差別を超越して同一であること。
※正法眼蔵(1231‐53)渓声山色「これ一色の正修行なり」
[語誌](1)関連するいくつかの事物を同一のものとしてとらえ取り扱う意を表わす②の用法を持つところから、武具甲冑(かっちゅう)の一揃いをいう「いっしゅく(一縮)」の転「いっしく(一支具と表記される)」と混同されて生じたのが④の用法だと考えられる。
(2)近世以降見られる⑥の用法がもっぱら「一式」の表記を取るのは、「皆式(かいしき)」「合式(がっしき)」などの語と同じ「『一(専一)』なる『式(ありさま・ようす)』」の構成を持つ語と解釈されたためか。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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