三遊亭 円朝(初代)(読み)サンユウテイ エンチョウ

新撰 芸能人物事典 明治~平成 「三遊亭 円朝(初代)」の解説

三遊亭 円朝(初代)
サンユウテイ エンチョウ


職業
落語

本名
出淵 次郎吉

別名
前名=三遊亭 小円太

生年月日
天保10年 4月1日

出生地
江戸 湯島切通し町

経歴
父は落語家の橘屋円太郎。弘化2年(1845年)三遊亭小円太を名乗り、7歳で初高座。間もなく義兄らの勧めで寺子屋に通うため寄席から遠ざかるが、4年父の師である2代目三遊亭円生に入門して本格的に落語を学びはじめ、嘉永2年(1849年)二ツ目。その後、一時廃業して下谷の紙及び為替両替商・葛西屋への奉公や、歌川国芳の下で絵の修業をするが、いずれも長続きしなかった。安政2年(1855年)落語界に復帰して円朝を名乗り、同年真打ち昇進。5年鳴物入りの道具噺で人気が出たが、これがもとで師に妬まれ、高座では自分がかけようと思った噺を師が先に演じてしまうことがたびたびあったことから、師に先んじられぬよう創作を行うようになり、「真景累ケ淵」などを生み出した。幕末期には三題噺を行う粋狂連に参加し、戯作者仮名垣魯文山々亭有人(条野採菊)、歌舞伎作者の河竹新七(河竹黙阿弥)らとも交流。文久元年(1861年)「怪談牡丹灯籠」を創作して落語界に新風をおこし、元治元年(1864年)からは当時江戸随一といわれた両国の垢離場の昼席で真打ちを務め、大看板として名声を確立した。明治維新後はそれまで使用していた道具を弟子の3代目三遊亭円生に譲って芝居噺を辞め、素噺に転換。8年演芸人税の制度ができると三遊派の頭取に遇され、同年3代目麗々亭柳橋らとともに落語睦会を結成し、6代目桂文治とともに頭取となった柳橋を支えた。一方で、4年山々亭有人の補筆で「菊模様皿山奇談」を刊行して以降、「怪談牡丹灯籠」「塩原太助一代記」など自作自演による噺の速記本を次々と刊行。これらは噺そのままを速記したものであるため言文一致の見本になり、二葉亭四迷らに影響を与えるなど、明治文学史にも足跡を残した。その芸風は当初キザとも評されたが、年を経るごとに洗練かつ円熟してすぐれた独創性と心理描写を備えるようになり、“落語の中興の祖”“近代落語の祖”といわれる。また、伊達千広や山岡鉄舟の勧めで参禅し、13年天竜寺の滴水禅師より無舌居士の号を授けられた。24年席亭との不和により寄席から隠退し、大阪で出演する以外は新聞紙上への創作速記発表に専念。30年東京の寄席に復帰するが、32年発病し同年10月木原店で行った「牡丹灯籠」が最後の高座となった。他の主な演目に「文七元結」「死神」「双蝶々」「名人長次」「英国孝子伝」「大仏餅」「黄金餅」などがあり、「円朝全集」(全13巻 春陽堂)、「三遊亭円朝全集」(全7巻・別巻 角川書店)がある。弟子に初代橘家円之助、3代目三遊亭円生、4代目三遊亭円生、4代目橘家円太朗、4代目三遊亭円遊、初代三遊亭円橘らがいる。円朝の名跡は、円朝の後援者であった藤浦周助(三周)の家が代々預かっており、大正期に初代三遊亭円右が襲名する話があったが、襲名の前に死去した。

没年月日
明治33年 8月11日 (1900年)

家族
父=橘屋 円太郎(落語家)

伝記
円朝〈下〉円朝〈上〉こしかたの記明治人物閑話円朝ざんまい―よみがえる江戸明治のことば落語見取り図―笑いの誕生・職人ばなし落語の種あかし落語『死神』の世界日本のこころ〈風の巻〉―「私の好きな人」「文学」増刊 明治文学の雅と俗続続 明治文学石摺考三遊亭円朝と歌舞伎円朝の世界限界芸術論三遊亭円朝の明治三遊亭円朝森銑三著作集〈続編 第6巻〉 人物篇〈6〉日本の『創造力』―近代・現代を開花させた470人〈3〉 流通と情報の革命説教の歴史―仏教と話芸落語名人伝落語風俗帳時代小説大全集〈5〉人物日本史 明治・大正鶴見俊輔集〈6〉 限界芸術論日本近代思想大系〈18〉 芸能落語家の生活泣きどころ人物誌落語家―いま、むかし 小島 政二郎 著小島 政二郎 著鏑木 清方 著森 銑三 著森 まゆみ 著関 厚生 著中込 重明 著西本 晃二 著長部 日出雄,谷沢 永一,杉本 苑子,赤坂 憲雄,桶谷 秀昭 ほか著岩波書店文学編集部 編塚越 和夫 著,白根 孝美 編高野 実貴雄 著岩波書店文学編集部 編鶴見 俊輔 著矢野 誠一 著永井 啓夫 著森 銑三 著富田 仁 編関山 和夫 編関山 和夫 著関山 和夫 著新潮社 編鶴見 俊輔 著倉田 喜弘 校注柳亭 燕路 著戸板 康二 著興津 要 著(発行元 河出書房新社河出書房新社中央公論新社中央公論新社平凡社うなぎ書房岩波書店青蛙房講談社岩波書店葦真文社近代文芸社岩波書店筑摩書房文芸春秋青蛙房中央公論社日本放送出版協会白水社白水社白水社新潮社筑摩書房岩波書店雄山閣出版文芸春秋旺文社 ’08’08’08’07’06’05’04’02’01’01’01’01’00’99’99’98’93’93’92’92’91’91’91’88’88’87’87発行)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android