下・提・垂(読み)さげ

精選版 日本国語大辞典 「下・提・垂」の意味・読み・例文・類語

さげ【下・提・垂】

〘名〙 (動詞「さげる(下)」の連用形の名詞化)
① さげること。つるすこと。⇔あげ
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)四「馬からをちた時には髪がゆがむぞ。其やうにゆがめてゆうぞ。日本のやうに、さげにはゆわぬぞ」
② 日本音楽の用語。旋律の進行において、低い音に進むこと、およびその部分。謡曲では「落チ」ともいう。ただし、その記号「落チ」の略号である「ヲ」は、一つの音だけが下がることで「下ゲ」は二つ以上の音が連続して下がることを示す。
※音曲声出口伝(1419)「下 花は雨のすぐるによて紅まさに老たり」
③ 江戸時代、事件を印刷して急報することを業とした者。また、その印刷物。
歌舞伎霊験亀山鉾(1822)序幕返し「源之丞は今の下(サ)げを引裂き、向うを見込む」
④ よだれかけ。
⑤ 岡持。
雑俳・とかへり集(1858)「本家番頭・じろっと庭の提見て行」
落語などの結末で、話のしめくくり方。しゃれや語呂合わせなどで聞く人の笑いをさそったり余韻を残す効果を狙ったりして話をしめくくる言葉。また、その部分。おち。
※雑俳・智恵車(1716‐36)「水誉て腹損って下にする」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉小尼公「おん身の話は掛詞の類のいと卑しきをさげとせり
⑦ やめること。
※雑俳・川柳評万句合‐安永五(1776)義二「下ケにするそうて相手もかみをゆひ」
⑧ 相場が安くなること。下げ足。下落
※家族会議(1935)〈横光利一〉「今までの新東の下げは仁礼としては、まだ本勝負に這入った活動ではなかった」
目上から渡されること。官府から支給されること。
開化の入口(1873‐74)〈横河秋濤〉四「四季には切立ズボンマンテルシャップ、靴迄も御下げ有り」
⑩ 縒(よ)った絹糸の量の単位。あげわくからはずした綛糸(かせいと)二〇綛を一提とする。
⑪ 「さげお(下緒)」の略。
⑬ 毎日渡す賃金をいう芝居者仲間の隠語
※南水漫遊拾遺(1820頃)四「歌舞伎楽屋通言〈略〉さげ、日々に渡す賃銭

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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