並・双(読み)ならべる

精選版 日本国語大辞典 「並・双」の意味・読み・例文・類語

なら・べる【並・双】

〘他バ下一〙 なら・ぶ 〘他バ下二〙
① 二つ以上のものを近く接して位置させる。一列にそろえる。
(イ) 空間的に近づける。つらねる。並列させる。
書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡「貴人の 立つる言立(ことだて) 設弦(うさゆづる) 絶えば継がむに 奈羅陪(ナラベ)てもがも」
(ロ) 時間的に近づける。つづける。かさねる。
万葉(8C後)二〇・四四四二「わが背子が屋戸の石竹花(なでしこ)日奈良倍(ナラベ)て雨は降れども色も変らず」
(ハ) いくつかの物事をとりそろえる。整える。
※蘇悉地羯羅経承保元年点(1074)下「其の数湏く二十一丸を隻(ナラヘ)上法と為」
② ひきあててその優劣をくらべる。また、匹敵させる。ひきあてる。
※万葉(8C後)一四・三四五〇「乎久佐壮子(をくさを)と乎具佐助丁(をぐさずけを)と潮舟の那良敝(ナラヘ)て見れば乎具佐勝ちめり」
日葡辞書(1603‐04)「ソノ ヒトニ カタヲ naraburu(ナラブル) モノワ ナイ
③ (ことばを次々に並べるの意で) たてつづけにいう。次々といいたてる。
浮世草子西鶴織留(1694)三「人の事請取出入の噯(あつか)ひ又は内談などに、言葉ならへて物よくいふ人もなし」

ならび【並・双】

〘名〙 (動詞「ならぶ(並)」の連用形名詞化)
① ならぶこと。並んでいる様子。並んでいるもの。列。
※書紀(720)大化二年正月(寛文版訓)「若し当(そ)の里坊に人無くば、比(ナラヒ)の里坊に簡び用ゐること聴(ゆる)す」
※親鸞聖人消息(13C中)一「鹿島・行方そのならびのひとびとにも、このこころをよくよくおほせらるべし」
② くらべるべきもの。たぐい。同類。同等。→ならびない
※東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)一二「其の形端政にして奇異にして双(ナラヒ)少し」
③ 遊里などで、味方する人やはかり事などに加担している人をいう。
※評判記・色道大鏡(1678)四「謀をめぐらし遣手をだきこみてならびとなる事すくなからず」
④ 女の情人。いろ
※物類称呼(1775)五「女色の事を〈略〉奥州にては、ならびといふ」
歌舞伎などで、幕開きの時に、舞台にならんでいる役の者。並び大名など。〔戯場訓蒙図彙(1803)〕
おかず。菜(さい)。人形浄瑠璃社会でいう語。〔洒落本・虚実柳巷方言(1794)〕

ならべ【並・双】

〘名〙 (動詞「ならべる(並)」の連用形の名詞化) ならべること。また、ならべたさま。ならび。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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