中ロ経済摩擦(読み)ちゅうろけいざいまさつ

知恵蔵 「中ロ経済摩擦」の解説

中ロ経済摩擦

エネルギー資源で経済的に潤ったロシアは、資源輸出に依存した経済構造は後進国型で危険だと自覚して、国家戦略を転換している。この戦略転換は、中ロ関係にも大きな影響を及ぼしつつあり、今では中ロの経済関係には様々なトラブルが生じるようになった。これまで、ロシアにとって中国は最大の武器市場であり、中国にとってロシアはエネルギー、木材その他の資源供給国として、また消費物資や工業製品の輸出国として特別の意味を有していた。したがって両国貿易・経済関係は急速な発展を遂げてきた。ロシアにとって、中国がアジアにおける最重要国であることに間違いはない。しかし、ロシアが資源依存型からの脱却を国家戦略として以来、ロシアは現在の中ロ貿易構造とその傾向に強い危機感を抱くようになった。ロシアは中国に対しては工業製品の輸出を望んでいるが、この10年間に武器以外の工業製品の対中国輸出割合は20分の1に激減し、逆に中国からの工業製品輸入は6倍近くに増えた。他方、中国への資源輸出は17倍に増え、対中国輸出全体の5割超となった。つまり今、ロシアは、工業国・中国への資源供給国になり下がっている。対中国貿易収支も、大幅黒字から赤字に転じつつある。この危機的状況を是正するためロシアは中国へ、原油ではなく石油精製製品を、また丸太ではなく木材加工製品を輸出しようとしている。したがって、例えば丸太をそのまま輸出する場合には80%もの関税をかけようとしている。しかし、労働力の豊富な中国は、加工は自国でいくらでもできる。それゆえ、「ロシアは資源さえ輸出してくれればよい」といったアプローチをして摩擦が生じているのである。

(袴田茂樹 青山学院大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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