中・仲(読み)なか

精選版 日本国語大辞典 「中・仲」の意味・読み・例文・類語

なか【中・仲】

[1] 〘名〙
[一] 限られた物の内側
① 一定の境のある物の内部。
万葉(8C後)七・一三〇〇「をちこちの礒(いそ)の中(なか)なる白玉を人に知らえず見むよしもがも」
※竹取(9C末‐10C初)「もと光る竹なん一筋ありけり。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり」
両端ある物の中間。二つの物の間、また中央。
古事記(712)上「老夫と老女と二人在りて、童女(をとめ)を中(なか)に置きて」
紫式部日記(1010頃か)消息文なか高き顔して」
③ 広い平面などその範囲内の不特定の場所をいう。
※竹取(9C末‐10C初)「船にのりて海の中に出でて」
④ 一定の範囲内に同質の物が数多くある場合に、その個々の物をさしていう。それらの物のうちの一つを取り出したりする場合に用いる。
※万葉(8C後)一九・四二八三「梅の花咲けるが中(なか)に含(ふふ)めるは恋やこもれる雪を待つとか」
[二] 抽象的な事態の内部をいう。
① ある事態、事柄、状態などについて、その内部に含まれているような場合にいう。
古今(905‐914)恋二・五五八「恋ひわびてうちぬるなかに行きかよふ夢のただぢはうつつならなむ〈藤原敏行〉」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「露けきなかに過ぐし給ふも」
② 心や思いのうち。心中。心の奥底
※後撰(951‐953頃)恋六・一〇一七「しられじなわがひとしれぬ心もて君を思ひのなかにもゆとは〈よみ人しらず〉」
[三] ある時とある時との中間の時。
① 一定の限界のある時間帯の中間の時間。
※名語記(1275)四「なかは中也。ねまかなの反歟。ねは夜のなか也。まは午也。昼のなか也。夜半と日中とをさす也」
② いく日か隔てたある特定の日と日との間。
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一四「なか三日かそのあひだに」
[四] 順序を示す。上下、高低、前後などについて、その中間に当たるものをさしていう。多く、三段階に分けて、その中間をさし、「中の」の形でも用いる。
① 重なるもの、連なるものの中間に当たるものをいう。「中の衣」「中の戸」「中の社」「中の指」など。
※枕(10C終)一〇八「除目の中の夜、さし油するに」
② 人の家系、身分などについていう。中流。中位。「中の位」「中の院」
※伊勢物語(10C前)八二「上なか下、みな歌よみけり」
③ 兄弟順についていう。
(イ) 三人の兄弟または姉妹の第二子をいう場合もあり、三人と限定せず第二子をいう時もある。これは中国の「伯仲叔季」の「仲」の訓読からきたともいう。
※源氏(1001‐14頃)東屋「なかに当るなん姫君とて」
(ロ) 伊豆八丈島で次女をいう。
読本・椿説弓張月(1807‐11)後「又此嶋にては、長女(そうりゃうむすめ)をにょこ、二女(にばんむすめ)をなか、〈略〉などと呼びて」
④ 「なかぎり(中切)④」の略。〔新時代用語辞典(1930)〕
⑤ 「なかて(中手)①」の略。
※小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉三「稲の種類、〈略〉糯(もち)と粳(うるし)との早(わせ)、中(ナカ)(おく)に由て、名を異にせるなり」
[五] 人と人との関係。親子、夫婦、兄弟、友人などとしての間柄。その感情的な面を主にしていう。現在では「仲」の字を使うことが多い。
※古今(905‐914)仮名序「男、女のなかをもやはらげ」
[2]
[一] 江戸の吉原、大坂の新町、両遊郭の称。
浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上「そこへ嶋縮に鹿の子の帯、慥に中の風と見た」
[二] 神奈川県横浜市の行政区の一つ。横浜市の中心部にある。昭和二年(一九二七成立。のち、同一八年南区を、同一九年西区を分離した。神奈川県庁・横浜市庁があり、横浜港の中心部に面する。
[三] 愛知県名古屋市の行政区の一つ。名古屋市の中心部にある。明治四一年(一九〇八)成立。昭和一九年(一九四四)栄区を分離したが、翌年、再び栄区を統合した。愛知県庁・名古屋市役所があり、北端に名古屋城がある。
[四] 広島市の行政区の一つ。昭和五五年(一九八〇)成立。市中南部、太田川河口の三角州にある。広島市の中心部。広島城・平和公園などがある。
[五] 神奈川県の中南部の郡。花水川(金目川)の流域にあり、相模湾に面する。明治二九年(一八九六)大住・淘綾(ゆるき)の両郡が合併して成立。
[六] 京都府北部、丹後半島の基部を占めた郡。平成一六年(二〇〇四)、京丹後市の成立で消滅。
[補注]((一)(四)①について) 平安朝まで、中旬の意で「中の十日」の言い方が行なわれたが、後世、これを中旬の一〇日目、すなわち、二〇日をいうと誤解し、それからの類推で、「中の三日(一三日)」「中の五日(一五日)」などの言い方が行なわれるようになった。

なからい なからひ【中・仲】

〘名〙
① 人と人との仲。間柄。人間関係。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「更に御宮仕のやうにもあらで、ただ人の御中らいのやうにておはしますや」
② 一族。血縁。親類。
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「同じ御なからひにも、頼み聞こえさせしかば、かやうの折にも人よりはとなん思給し」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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