中村善右衛門(読み)なかむら・ぜんえもん

朝日日本歴史人物事典 「中村善右衛門」の解説

中村善右衛門

没年:明治13.8.13(1880)
生年:文化7(1810)
幕末維新期の養蚕改良家。岩代国(福島県)伊達郡梁川村の蚕種製造家の家に生まれる。当時,伊達郡,信夫郡を中心とする奥州の養蚕地帯では,火力を用い気温を上げて蚕を飼育する方法が普及しつつあったが,善右衛門は飼育時の適正温度を調べ,正確な温度調節を行いながら飼育できるように,医者の体温計ヒントを得て,苦心の末,養蚕用の温度計を製作した。「蚕が当たる計器」すなわち「蚕当計」と名付け,これを利用した標準飼育法を完成させ,その骨子を『蚕当計秘訣』(1849)なる冊子にまとめて出版した。当初はこの技術を排斥する者もあったというが,まもなく優れた方法と認められ,以後,養蚕に温度計を使用することが普及していった。「蚕当計」製造への着手から『蚕当計秘訣』の出版までに10年もかかっており,善右衛門の養蚕改良への執念のほどが窺われる。<参考文献>松村敏「『蚕当計秘訣』解題」(『日本農書全集』35巻),庄司吉之助『近世養蚕業発達史』

(松村敏)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中村善右衛門」の解説

中村善右衛門 なかむら-ぜんえもん

1806-1880 江戸後期-明治時代の養蚕技術者。
文化3年生まれ。陸奥(むつ)伊達郡(福島県)の人。体温計にヒントをえて養蚕の温度管理用の寒暖計づくりをこころみ,天保(てんぽう)14年蚕当計を製作する。嘉永(かえい)2年それを利用した標準飼育法を「蚕当計秘訣」にまとめた。明治13年8月13日死去。75歳。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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