中欧(読み)ちゅうおう

精選版 日本国語大辞典 「中欧」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐おう【中欧】

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デジタル大辞泉 「中欧」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐おう【中欧】

中部ヨーロッパ。ドイツオーストリアハンガリースイスなどを含む地域。

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百科事典マイペディア 「中欧」の意味・わかりやすい解説

中欧【ちゅうおう】

中央ヨーロッパを指すドイツ語Mitteleuropa(英語Central Europe)の訳語。冷戦終結後は,ポーランドチェコスロバキア,ハンガリーの4国をいうことが多いが,この語は19世紀初めから政治的意味を込めて用いられたため,一義的にはその範囲を規定できない。最初はパン・ゲルマン主義的な文脈でバルカン半島なども含めて用いられたが,19世紀末のチェコなどでは,ドイツとロシアの勢力圏のせめぎあう地域での〈諸民族共存の場〉として中欧をとらえた。またドイツ系諸文化とこの地域に特徴的なユダヤ系文化を軸とする〈中欧〉文化の理念的支柱ともなった。第2次大戦後の〈東欧〉社会主義圏が東欧革命で崩壊して以後は,政治的・経済的状況に共通性の多い前記4国が〈中欧〉として結束し,1991年以降〈ビシェグラード四国協力〉(当初は3国)を組んで,1993年から〈中欧自由貿易協定(CEFTA)〉が発効しているが,各国ともヨーロッパ連合(EU)加盟を志向している(1999年ポーランド,チェコ,ハンガリーはNATOに加盟。2004年には,この3国のほか,スロバキア,スロベニアやバルト3国など計10ヵ国がEUに加盟した)。これとは別に,中欧4国にオーストリア,イタリアやスロベニア,クロアチアボスニア・ヘルツェゴビナマケドニアを加えた〈中欧イニシアティブ〉(前身は1978年以来のアルプス・アドリア地域協力)が1980年代末から組織され,1996年以後ウクライナ,ベラルーシルーマニアなどバルカン諸国も加わり,環境保護,少数民族問題などでの連携を図っている。
→関連項目スロバキアチェコハンガリーポーランドヨーロッパリージョナリズム

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中欧」の意味・わかりやすい解説

中欧
ちゅうおう
Mitteleuropa ドイツ語
Central Europe 英語

ヨーロッパの中部をさす、不確定な、かつ場合により使用される呼称。一般的にはドイツを中心とし、バルト海とアルプス、ロシアとフランスに挟まれた地域に当たるが、その範囲は人により、場合によりまちまちである。最初にこの用語を公式に使ったのは、リストGeorg Friedrich Listである。彼はこの言葉を19世紀に政治地理的な意味で使用し、当時のドイツ、オーストリア・ハンガリー帝国、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクを含む範囲をさすものとした。その後、ポーランド、ルーマニアを含めて使用されることもある。ナチスドイツの時代には、ドイツ文化圏をさす意味で使われることもあった。したがって、その版図は、西欧や東欧と重複する。国連の統計年鑑でヨーロッパを細分化する場合には使用されていない。

[久保田武]

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知恵蔵 「中欧」の解説

中欧

1989年の東欧諸国の体制転換に伴い、主としてチェコスロバキア、ハンガリーで、それまでの「東欧」に代わって使われた用語。「東欧」と同様に、「中欧」概念も極めて政治的なものであり、歴史的な東欧概念に代わり得るものではない。中欧といった場合、歴史的には、ドイツ帝国とハプスブルク帝国との統合を目指す大ドイツ主義的「中欧」概念と、ハプスブルク帝国内諸民族の共存の場としての「中欧」概念とがある。現在使われている「中欧」は後者の意味合いが強く、オーストリアに、従来の東欧からポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、及び旧ユーゴのスロベニアを加えるのが、常識的な線であろう。「中欧」の枠組みで、ビシェグラード協力と中欧イニシアチブの2つの地域協力が推進されている。

(柴宜弘 東京大学教授 / 2007年)

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