中間周波増幅器(読み)ちゅうかんしゅうはぞうふくき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中間周波増幅器」の意味・わかりやすい解説

中間周波増幅器
ちゅうかんしゅうはぞうふくき

電気通信における高周波増幅器一種送信機では最終的に送信しようとする周波数より、受信機では受信した電波の周波数より、一般には低い周波数で増幅して、高い利得(入出力の比)、安定度、伝送帯域幅の一定した特性を得られるようにした増幅器をいう。スーパーヘテロダイン方式の受信機では、受信した電波を高周波増幅器で増幅したのち局部発振器からの高周波出力と混合して差の周波数をつくり、それが中間周波トランスの周波数(一般に455キロヘルツ)と一致するようにしておく。他の周波数を受信するとき、局部発振の周波数がつねに受信周波数+455キロヘルツとなるように可変にしておけば、その増幅区間ではどの電波を受信するときにも一定の帯域を増幅すればよく、前記の条件を満たすに好都合である。また高周波増幅器と異なる周波数で増幅するから、もし中間周波増幅器の出力から高周波増幅器の入力回路に対して帰還(増幅した信号が何段も前に戻ること)があっても、周波数が違うので発振がおこらず、全体で100デシベル(10万倍)を超える増幅を行うことができる。業務用の受信機にはダブルスーパーヘテロダイン方式という二重の周波数変換を行うものがある。これには2方式あり、周波数可変の二つの局部発振器をもち、二つの周波数の違う中間周波増幅器(たとえば2メガヘルツと455キロヘルツ)をもつもの、および、第一段目の局部発振器を周波数帯ごとに固定(水晶発振器を使用)周波数とし、一段目の中間周波数増幅器のほうを可変同調型(たとえば2メガヘルツから3メガヘルツ)として、各周波数帯の電波がすべてこの同調範囲に入るように水晶発振器の周波数を決める。そして、次の中間周波トランス(455キロヘルツ)へ、第二局部発振器(可変)によって変換する。前者は利得が大きく、イメージ(局部発振周波数+中間周波数となる周波数による混信のこと)防止の性能がよい。後者は受信周波数の安定度が格別である。アメリカのコリンズ社の発明によるもので、受信機設計史に残る名機である。レーダーや衛星通信に用いられるような数ギガヘルツの周波数帯では、増幅によって大きな利得を得ることが困難で、数十メガヘルツ帯の中間周波数に変換してから必要な利得を得ている。一方、送信機では、単側波帯single side bandの信号を1メガヘルツ程度の中間周波数で形成してこれを適当に増幅し、レベルと帯域幅を整えてから他の周波数と混合して送信周波数帯に変換する。このように中間周波増幅器はラジオ受信機のみならず、各種の通信装置の内部の増幅過程で、増幅のしやすさ、帯域特性の設定のしやすさ、変調の行いやすさ、などの利点から、受信した周波数や送信する周波数と変・復調信号周波数との間に選んだもっとも目的に合致した周波数帯で増幅する装置である。

[石島 巖]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中間周波増幅器」の意味・わかりやすい解説

中間周波増幅器
ちゅうかんしゅうはぞうふくき
intermediate frequency amplifier

スーパーヘテロダイン受信機において,周波数変換された中間周波数信号を中心としてある帯域の信号を増幅する増幅器。変成器結合による2,3段の同調増幅器のほか Q ダンプ回路やスタガ回路を用いた増幅器が使われる。周波数が低くなっているため増幅が容易で,また必要帯域外の周波数のものをほとんど通さないので,高い選択度が得られる。ラジオ,テレビジョンの受信機などに広く用いられている。

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