改訂新版 世界大百科事典 「主婦の友社」の意味・わかりやすい解説
主婦の友社[株] (しゅふのともしゃ)
石川武美創業の出版社。本社,東京都千代田区神田駿河台。1916年東京家政研究会の名称で発足し,翌17年《主婦之友》を創刊して社の基礎を固めた。21年社名を主婦之友社と改めた。家計や料理,着物などの実用記事が良妻賢母教育の世相を背景に好評を博し,〈結婚したら主婦之友〉の宣伝とあいまって,急速に読者を獲得,創刊数年にして競争の激しい婦人雑誌界に不動の地歩を築いた。一社一誌主義をとり,収益のすべてを本誌の充実にそそぎ,太平洋戦争中は国策に積極的に協力した。しかし,敗戦後,時流とともに歩いた同誌の全面的な戦争協力が批判の的とされ,石川は社長を退き,一時は廃刊を決意するにいたった。しかし,GHQの承認を得て新陣容を整えて再出発した。54年新年号からは誌名を《主婦の友》に改め,さらに56年3月号からは判型を大型化しAB判(210mm×257mm)とした。ローマ字名の新型婦人雑誌の続出するなか,《主婦の友》を含む伝統的な婦人4誌のうち3誌が相次いで休刊(《婦人生活》86年休刊,《婦人俱楽部》88年休刊,《主婦と生活》93年休刊),現在は《主婦の友》1誌を残すのみとなった。これは,もはやかつての良妻賢母教育に見合った編集方針では,女性,とくに若い層を読者に獲得することができなくなったためと思われる。こうした状況は雑誌の細分化をよび,同社は現在,月刊誌《わたしの赤ちゃん》(1973)などの各種雑誌を発行するほか,各種の単行本を刊行している。また本社で日用生活用品の販売も行っている。
執筆者:海老原 光義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報