出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
n個の変数x1、x2、…、xnの多項式において、任意の二つの変数を交換すると、もとの式の符号だけを変えた式が得られるとき、その式はx1、x2、…、xnに関する交代式であるという。たとえば、二つの変数x、yの多項式
f(x, y)=x3-x2y+xy2-y3
のxとyを入れ換えて新しい多項式をつくる。
f(y, x)=y3-y2x+yx2-x3
この多項式はもとの多項式f(x, y)に-1を掛けたものになる。つまり
f(y, x)=-f(x, y)
このような多項式の性質を、変数を増やして考えたものが交代式である。つまり、n個の変数x1、x2、…、xnの多項式f(x1, x2,…, xn)で異なるiとjに対し、xiとxjを入れ換えると、もとの多項式f(x1, x2,…, xi,…, xj,…, xn)からf(x1, x2,…, xj,…, xi,…, xn)ができる。この二つの多項式を比べたとき、
(*) f(x1,…, xi,…, xj,…, xn)=-f(x1,…, xj,…, xi,…, xn)
が任意の相異なるiとjに対して成り立つとき、この多項式fを交代式という。(*)のかわりに
f(x1,…, xi,…, xj,…, xn)=f(x1,…, xj,…, xi,…, xn)
が成り立つのが対称式である。
二つの交代式の和、差はまた交代式であるが、積は対称式になる。また、対称式と交代式の積は交代式である。n変数の交代式でいちばん簡単で重要なものは
である。このΔnは1≦i<j≦nなるすべてのi、jに対し、差(xi-xj)をつくり、その積をとったものであるから、差積といわれる。たとえば
Δ2=x1-x2,
Δ3=(x1-x2)(x1-x3)(x2-x3)
である。(*)式でxi=xjと置いてみると
f(x1,…, xi,…, xi,…, xn)=-f(x1,…, xi,…, xi,…, xn)
となり、f(x1,…, xi,…, xi,…, xn)=0を得るから、交代式f(x1,……, xn)はxiの一変数多項式として解xjをもち、(xi-xj)で割り切れる。したがって任意の差(xi-xj)(i<j)で割り切れるから、それらの積である差積Δnで割り切れる。
f(x1,……, xn)=Δn・s(x1,……, xn)
なる多項式s(x1,……, xn)を考えると、fとΔnは交代式であるから、sは対称式になる。ここで対称式の基本定理を使うと、sは基本対称式s1、s2、……、snの多項式になる。ここで
である。ゆえに任意の交代式は、基本対称式の多項式と差積の積になる。この結果は交代式の因数分解などに使われる。たとえば
x3-x2y+xy2-y3
は交代式であるからΔ2=x-yで割り切れる。実際割り算を行って、商x2+y2を得るから
x3-x2y+xy2-y3
=Δ2(x2+y2)=Δ2(s12-2s2)
となる。
[菅野恒雄]
3変数の多項式f(x,y,z)=x2y-y2x+y2z-z2y+z2x-x2z,g(x,y,z)=x4y-y4x+y4z-z4y+z4x-x4z-x3y2+x2y3-y3z2+z3y2-z3x2+x3z2において,xとyを入れかえると,符号が変わって,それぞれ-f(x,y,z),-g(x,y,z)となる。yとzあるいはzとxを入れかえても同じである。このような多項式のことを交代式と呼ぶ。一般にn変数の多項式f(x1,……,xn)のうちで,変数x1,……,xnの順序を入れかえたとき,f(x1,……,xn)か-f(x1,……,xn)となるもので,対称式でないものを交代式という。これは任意の二つの変数を入れかえると符号が変わるということで特徴づけられる。多項式,
は差積と呼ばれる。差積は交代式であり,すべての交代式は差積と対称式の積になる。したがって,差積はもっとも簡単な交代式であり,その意味で最簡交代式とも呼ばれる。交代式の偶数個の積は対称式であり,奇数個の積は交代式である。交代式と対称式の積は交代式である。
執筆者:丸山 正樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...
4/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
4/12 デジタル大辞泉を更新
4/12 デジタル大辞泉プラスを更新
3/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
2/13 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新