日本大百科全書(ニッポニカ) 「仁王(狂言)」の意味・わかりやすい解説
仁王(狂言)
におう
狂言の曲名。雑狂言。賭(か)け事に負け無一文になった博打(ばくち)打ち(シテ)が、国元を出奔する前に知り合いのところに寄ると、事情を聞いた知人は、博打打ちを仁王に仕立て参詣(さんけい)人から供え物をとる知恵を授ける。そして仁王の扮装(ふんそう)をさせ上野に立たせると、知人は大ぜいの参詣人を連れてき、まず「さくら」になって刀を供えて願い事をする。それにつられた参詣人たちは着物や金銭などを次々に供え、願をかけて帰っていく。上々の首尾に調子にのった博打打ちが、もうひと稼ぎと待ち受けているところに、足の悪い男が登場して、仁王の御利益(ごりやく)にすがって治そうと、仁王の身体をなで回すうち、仁王が動くので偽者と気づき、追い込む。博打打ちが目をむき口をかっと開いた「仁王立ち」の姿や、参詣人たちの当意即妙の願い事などが理屈抜きに楽しい作品。
[油谷光雄]