仕付・躾(読み)しつける

精選版 日本国語大辞典 「仕付・躾」の意味・読み・例文・類語

し‐つ・ける【仕付・躾】

〘他カ下一〙 しつ・く 〘他カ下二〙 (「し」はサ変動詞「する」の連用形)
① 作りつける。仕掛ける。設ける。したてる。
※堤中納言(11C中‐13C頃)虫めづる姫君「くちなはの形をいみじく似せて、動くべきさまなどしつけて」
② やりなれている。やりつける。
※能因本枕(10C終)一二四「犬ふせぎにすだれをさらさらと懸くるさまぞいみじくしつけたるや」
③ し始める。やりだす。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「今すこし珍らしからんことしつけて、同じくは例にせむ」
④ (躾) 礼儀作法や生活習慣などを教えて身につけさせる。習わせる。
史記抄(1477)一六「客と云は礼儀をよく習てしつけて」
⑤ 娘や息子などの身のふり方をきめさせる。
(イ) 嫁入りさせる。とつがせる。
浮世草子・好色一代女(1686)四「今時の縁組すゑすゑの町人百姓迄〈略〉衣類諸道具、美をつくして仕付(シツケ)ける」
(ロ) 息子や娘に家を与えて独立させる。
日葡辞書(1603‐04)「Xitçuqe, uru, eta(シツクル)〈訳〉親が子どもに家を与えてめんどうをみる」
(ハ) 奉公させる。
浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)上「あの子斗(ばかり)大坂へおばをたよりに何方へもしつけてくれとてのぼされしが」
(ニ) 独立させる。
※浮世草子・立身大福帳(1703)四「古老の手代六人まで一度に仕附」
⑥ 馬に馬具をつける。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑦ 負かす。
バレト写本(1591)「ハタラキ スグレテ アイテヲ xyccuque(シツケ) タレバ」
着物に「しつけ⑥」をする。仕付糸をかける。
⑨ 苗を植えつける。田植えをする。農作物田畑にまきつける。
※俳諧・韻塞(1697)元祿壬申冬十月三日許六亭興行「けふばかり人も年よれ初時雨芭蕉〉 野は仕付たる麦のあら土〈許六〉」

し‐つけ【仕付・躾】

〘名〙
① 作りつけること。設けて置くこと。〔運歩色葉(1548)〕
※三好記(1663)下「鞘をば銀のし付にして」
② ならわしとすること。習慣。
※百丈清規抄(1462)一「其寺のしつけでする事があるぞ」
※史記抄(1477)一二「もとからのしつけでかうするぞ」
③ (躾) 礼儀作法を身につけさせること。また、身についた礼儀作法。
※天草本平家(1592)三「キソワ ミヤコエ ノボッテ xitçuqe(シツケ) ナドワ ヨカッタカ?」
④ 処罰すること。制裁を加えること。
今堀日吉神社文書‐天正一八年(1590)一〇月六日・近江今堀惣分掟「何様にも地下我人にためにあしき事いたし於之者、ききいたし次第に、そうふんとしてしつけ可仕事」
⑤ 奉公させること。また、嫁に行かせること。
⑥ 着物などの縫い目が整うように、また、仕立てがくるわないように、仮に糸で縁をあらく縫っておくこと。また、その糸。
※俳諧・毛吹草追加(1647)中「蛛(くも)の糸は木葉衣のしつけ哉〈近吉〉」
⑦ 稲の苗を正しく植付けることから、田植の義となり、転じて田畑へ作物を栽培すること一般をいう。
[語誌](③について) (1)習慣性の意の仏語習気(じっけ)」が一般化する過程で、語形が「しつけ」に変化し、動詞「しつける」の連用形名詞と混同され、漢語と意識されなくなる。
(2)対象を限定しない一般用語「仕付け」と区別する意図からか、「しつける」対象を礼儀作法に限る武家礼式の用語として「躾」「」などの字訓で表記されるようになり、「仕付け」を別語とする意識が広まったと思われる。さらに、「躾」は中世末期から近世初期にかけて武家礼式が急速に普及するとともに一般化した。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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