仕舞・終・了（読み）しまう

精選版 日本国語大辞典

し‐ま・う ‥まふ【仕舞・終・了】

〘他ワ五（ハ四）〙 (「し」は動詞「する」の連用形)

[一]

① し終える。しとげる。しすます。

※日葡辞書（1603‐04）「レイヲ ximǒ(シマウ)〈訳〉義務としての訪問をなしとげる」

※滑稽本・浮世床（1813‐23）初「此内いんきょのあたま結しまひ」

② 終わりにする。なくす。

※黄表紙・莫切自根金生木（1785）中「世の中には富で身代(しんだい)をしまふもあるから」

※寄笑新聞（1875）〈梅亭金鵞〉九号「最(も)はや見世(みせ)を仕舞(シマ)はんと思ふなり」

③ 入れ納める。始末する。置くべき場所へかたづける。

※浮世草子・武道伝来記（1687）五「御意をも請ず我家来を遣はし、むたいに家内を仕舞(シマハ)せける」

※俳諧・猿蓑（1691）五「灰まきちらすからしなの跡〈凡兆〉 春の日に仕舞てかへる経机〈正秀〉」

④ 殺して結末をつける。かたづける。

※浮世草子・本朝二十不孝（1686）一「長うとって五年か三年、外(ほか)にしまふてやる思案も有」

⑤ 商家などで、各節季、特に、年末などの支払、または取立を終わる。その年の総決算をする。

※虎明本狂言・米市（室町末‐近世初）「あふ、今迄しまはぬものがあらふか、わごりょも定てしまひがならう」

⑥ 遊里で、揚げ代を出して遊女を買い切る約束をする。主として江戸でいい、特に紋日などの特別の費用を客が引き受けることにいう。

※洒落本・寸南破良意（1775）伴頭株「『節句がさ』『仕まってくれる客がねへか』」

⑦ 取引市場で転買、または買い戻すことによって取引を完了する。〔いろは引現代語大辞典（1931）〕

[二] 補助動詞として用いる。

① (動詞の連用形に助詞「て」を添えた形に付いて) その動作が完了する意を表わす。…し終わる。また、完了の意をこめて、動作を強めていう。

※浮世草子・好色五人女（1686）一「追付勘当帳に付てしまふべし」

※滑稽本・浮世風呂（1809‐13）前「くやしくは石垣へあたまを打付(ぶっつけ)て、死(しん)ででもしまったが能(いい)」

② (「…ずに（ないで）しまう」の形で) 実現しないままになる、行なわずに終わるの意を表わす。

※硝子戸の中（1915）〈夏目漱石〉三七「晩年に生れた私には、母の水々しい姿を覚えてゐる特権が遂に与へられずにしまったのである」

し‐まい ‥まひ【仕舞・終・了】

〘名〙 (動詞「しまう（仕舞）」の連用形の名詞化) 結末がつくこと。片をつけること。

① おわること。やめること。すんでしまうこと。おわり。→じまい。

※俳諧・詞林金玉集（1679）一五「大年はわれよひと夜の仕舞哉〈友世〉」

② 序列、順位、時間などの最後の部分。ものごとの最終。いちばんあと。最後。すえ。

※滑稽本・浮世風呂（1809‐13）二「いつでもしまひは鼾(いびき)さ」

③ 特に、人の境遇、一生の結末。身のおさまり。はて。

※浄瑠璃・八百屋お七（1731頃か）下「悲しき老のしまいやと」

④ 処置すること。決着をつけること。仕事などのかたづくこと。また、その処置、結果。首尾。

※日葡辞書（1603‐04）「コンニチノ ximai(シマイ) ヨウゴザッタ」

⑤ 商家などで、しめくくりの勘定をすること。また、年末に、その年の収支決算をすませてから、正月の支度をすること。決済。決算。正月仕舞。

※虎明本狂言・米市（室町末‐近世初）「正月と云もあすの事じゃ〈略〉わこりょも定てしまひがならう」

⑥ 暮らし向き。

※浮世草子・傾城禁短気（1711）一「是ほど落ちても九軒町を昼歩行(ありく)は、分(わけ)の悪しからぬ仕舞(シマイ)」

⑦ 江戸の遊里で、前もって女郎を買い切る約束をすること。また、紋日の費用などの特別な費用の支払いを約束すること。

※談義本・当世花街談義（1754）二「物日紋日にも随分余の客に仕舞(シマヒ)を頼み」

⑧ 化粧をすますこと。化粧。身じまい。

※歌舞伎・隅田川続俤（法界坊）（1784）口明「美しう髪結うて仕廻ひして」

⑨ 茶道で、点前(てまえ)を終えて、決った順序に従って道具を片づけること。

※利休客之次第（1587）「亭主猶以手前様々の仕廻あり」

⑩ 取引所で、転売、または買戻しによって、取引関係などを完了すること。てじまい。〔現代文化百科事典（1937）〕

出典　精選版 日本国語大辞典