伏・臥(読み)ふせる

精選版 日本国語大辞典 「伏・臥」の意味・読み・例文・類語

ふ・せる【伏・臥】

〘他サ下一〙 ふ・す 〘他サ下二〙
① 下を向かせる。うつむかせる。腹ばいにさせる。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「前に跪(ひざまつ)いて伏(フセ)つ」
② 横にする。倒す。寝かす。
万葉(8C後)四・五〇〇「神風の伊勢の浜荻折り伏(ふせ)て旅寝やすらむ荒き浜辺に」
③ うつむけに置く。くつがえす。
(イ) 器状のものをさかさまにする。裏を向ける。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「火処(ほところ)(や)き、覆槽(うけ)(フセ)て〈略〉顕神明之憑談(かむかかり)す」
(ロ) かぶせておさえる。
※虎寛本狂言・千鳥(室町末‐近世初)「先是から伊勢路へ掛って参れば、浜辺で鵆(ちどり)を伏する所が御座るが」
(ハ) 賭博(とばく)で、壺をさかさにして賽(さい)をおおう。転じて、博打を打つこともいう。
咄本・楽牽頭(1772)なぞ「なむさん、しめられた。夫又ふせるぞ」
(ニ) 物の表や上になる側、本などの開いた側を下に向ける。また、そのようにして置く。
※少年行(1907)〈中村星湖〉五「本を伏せて、ふと壁に向ふと」
④ ひそませる。隠れさせる。
古今(905‐914)恋三・六三二・詞書「かの道に夜ごとに人をふせてまもらすれば」
一面に置く。敷く。
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日「裳の縫ひ目に白銀の糸をふせて、くみのやうにし」
⑥ 屈服させる。従わせる。→説き伏せる
※信心録(ヒイデスの導師)(1592)一二「シザイ ニ fuxeraretaru(フセラレタル) チョウテキ ト ナリタル ニヨッテ ナリ」
中世、耕作地の一部を領主に報告しないで臥田(ふせだ)とする。
高野山文書‐文永九年(1272)八月一三日・阿氐河庄上村臥田注文「注進 上村ふくけんにふする田事。合 三丁七反半十歩〈四百もんにてふせ候〉」
⑧ 実情などを隠す。公表しない。
※人情本・郭の花笠(1836)三「それまでは千代春さんに秘(フ)せておかにゃア」
⑨ つくろう。衣類を補修する。
日葡辞書(1603‐04)「キルモノヲ fusuru(フスル)
⑩ (江戸時代、京坂地方で) 何日と、日を限って約束・契約する。
※咄本・諺臍の宿替(19C中)五「けふから四日目にふせておくが、さうしたならづぼらせずに来てくれるやろ」

ふ・す【伏・臥】

[1] 〘自サ五(四)〙
① 顔を下に向ける。うつむく。また、腹ばいになる。うつぶす。
※万葉(8C後)五・九〇四「天つ神 仰ぎ乞ひのみ 国つ神 布之(フシ)てぬかづき」
② 横になる。横たわる。倒れる。寝る。また、病気などで寝こむ。
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「柀(まき)は以て顕見き蒼生の奥津棄戸に将(も)ち臥(フサ)む具にすべし」
③ じっとしている。ひそむ。隠れる。
古事記(712)下・歌謡「み吉野の をむろが嶽に しし布須(フス)と」
[2] 〘他サ下二〙 ⇒ふせる(伏)〔下一段動詞〕

ふせ・る【伏・臥】

〘自ラ五(四)〙 横になる。ふす。うつぶす。病気で寝る意にもいう。
※漢書列伝景徐抄(1477‐1515)陳勝項籍第一「創(きず)を病(やう)て臥(フセリ)たを」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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