伸・延(読み)のびる

精選版 日本国語大辞典「伸・延」の解説

の・びる【伸・延】

〘自バ上一〙 の・ぶ 〘自バ上二〙
[一] 空間的に広がる。
① 広がる。また、長くなる。
※観智院本三宝絵(984)中「若経のしじまれるか、若はこののひたるかとて」
※源氏(1001‐14頃)若菜下「老いの波の皺、のぶばかりに人めかしくて」
② 生長する。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「人の生るる時が、一尺五寸ぞ。其れが一年に三寸づつのぶるぞ」
③ ゆるんで長くなる。
※平家(13C前)九「此河は西国一の大河ぞや。腹帯(はるび)ののびてみえさうぞ」
④ 遠くへ位置を変える。遠くへにげる。にげのびる。
※平家(13C前)四「いまは宮もはるかにのびさせ給ひぬらんとやおもひけん」
⑤ そば・うどんなどが長くなったまま弾力がなくなる。また、ゴムなどが古くなって弾力がなくなる。
※俳諧・鷹筑波(1638)一「客人や思ひの外にのびつらん ふできなれ共いたすうんどん〈不竹〉」
⑥ 溶けたり、やわらかくなったりして、よくひろがる。「膠(にかわ)がよくのびる」
⑦ 疲れたり、なぐられたりして、ぐったりする。ぐったりして動けなくなる。また、死ぬ。
※閑散無双(1934)〈徳川夢声〉天国に結ぶ病院「ノビたる以上は、不思議と患者も酒を要求しなくなるのである」
[二] 時間的に広がる。
① 命などが長く保つ。久しくなる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)二「疾病を離れて寿命延びて長からむ」
② 期日・時刻が先になる。また、期間・時間が予定より長くなる。延引する。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「山の御門の御賀ものびて秋とありしを」
[三] 心理的な状態についていう。
① (「心がのびる」の形で) のびのびとする。くつろぐ。ゆったりする。
※源氏(1001‐14頃)絵合「三月の十日のほどなれば、空もうららかにて、人の心ものび」
② (「鼻毛がのびる」の意から) 異性に心を奪われる。異性にまいる。
※評判記・吉原すずめ(1667)上「あまりしたるく、のびたるけしきのみゆるは〈略〉尤たしなむべき事也」
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上「ひったり抱き寄せしみじみ咡く、色こそ見へね河与が悦喜、エ忝いと、のびた顔付」
[四] 量や能力などの状態についていう。
① 財産が豊かになる。金がたまる。金が残る。
※浮世草子・好色敗毒散(1703)四「此利にて〈略〉百五拾貫目延(ノ)びるなり」
② ゆたかになる。盛大になる。
※浮世草子・子孫大黒柱(1709)四「商売に精を出し、毎年のびる店おろしを」
③ 勢力、能力などがつく。発展する。勢いがよくなる。
※随筆・蘐園雑話(1751‐72頃)「近来の御作はのびぬやうなりと云ひたれば」
④ 相場が騰貴する。
※朝野新聞‐明治二四年(1891)四月一一日「頭重く伸び兼ねたる商況にて本日も諸株総て不活発の有様を呈し」

の・ぶ【伸・延】

[1] 〘自バ上二〙 ⇒のびる(伸)
[2] 〘他バ下二〙 ⇒のべる(延)

のば・す【伸・延】

〘他サ五(四)〙
① 空間的に広げる。また、長くする。高くする。
※和英語林集成(初版)(1867)「テ、アシヲ nobasz(ノバス)
※福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉緒方の塾風「今の真宗坊主が毛を少し延(ノ)ばして」
② 曲がったり、また巻いたり、たたんだりしてあるものを、まっすぐにしたり、平らにしたりする。
※浮世草子・西鶴織留(1694)三「着初の袴を我手にかけて皺延(ノバ)して」
③ 溶かして広げる。ゆるくする。
※海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉三八「ペンキはいくら油でのばしても」
④ 遠くへ逃がす。
※平家(13C前)四「敵おそひかかりければ〈略〉父をのばさんと〈略〉防ぎたたかふ」
⑤ 暴力などを加えて相手を動けなくする。気絶させる。のす。
※蒙古襲来絵詞(1293頃)「馬干潟に馳せたはして、その敵をのはす」
⑥ 時間的に広げる。期日、時刻を先送りにする。また、期間、時間を長びかせる。
※平家(13C前)四「程をのばさんがために、ながながとぞ僉議したる」
⑦ 気持をくつろがせる。ゆったりとさせる。
※日葡辞書(1603‐04)「キヲ nobasu(ノバス)
⑧ (「鼻をのばす」の意で) いばる。天狗(てんぐ)になる。鼻を高くする。〔大坂繁花風土記(1814)〕
⑨ (「金(かね)をのばす」の意から) 金・財産をふやす。金をためる。
※浮世草子・本朝二十不孝(1686)二「一歩小判を取出し四五年に折角延(ノバ)しけるかひなしと」
⑩ 勢力、能力などを、今までよりいっそう発展させる。
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「政事家の勢力を東海道に展(ノ)ばすには」

のび【伸・延】

〘名〙 (動詞「のびる(伸)」の連用形の名詞化)
① 長くなったり、広がったりすること。また、その度合。
※海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉三八「濃くて堅くて延びの悪いペン罐を」
② 枡の大小から生じる計量値の増分。年貢収納の時、目減り分をあらかじめ計上して納める分。
※東寺百合文書‐は・弘安六年(1283)一一月二四日・若狭太良荘年貢支配帳「定正米四十七石七斗九升五合四勺 延定五十五石九斗二升八勺七才」
③ (━する) 疲れたり退屈したりした時に、手足を伸ばすこと。また、背伸びをすること。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※俳諧・紅梅千句(1655)九「楽寝にはおそはれまじや小夜枕〈政信〉 胸にある手をのけてのびする〈季吟〉」
④ 決めた期日、時刻を先送りにすること。延期。
※人情本・閑情末摘花(1839‐41)五「それを故障にまづ今夜の、婚礼は延(ノビ)になる」
⑤ 金や財産がふえること。また、ふえた金・財産。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「借銀の事はおいて、年中によほどづつのびがあるべし」
⑥ 勢力や能力がついて盛んになること。
※現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉III「公害の費用を企業から徴収するならば、〈略〉公害を生む産業の伸びが抑えられるのである」
⑦ 囲碁で、自分の石から縦横に直行する手。ハネてからノビるのをハネノビというなど、形によって呼称が異なる。

のば・う のばふ【伸・延】

[1] 〘自ハ四〙 のびる。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「火延(ノハヒ)燎えず」
[2] 〘他ハ下二〙 のべる。のばす。
※後撰(951‐953頃)秋下・三九四「数しらず君がをのはへつつなだたる宿の露とならなむ〈伊勢〉」

のばわ・る のばはる【伸・延】

〘自ラ四〙 伸びる。特に、生きのびる。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「よろづのこと忘れ、齢のははる心地こそし侍しか」

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