[1] 〘名〙 (高く大きく設けた席「座(くら)」に「ゐる」(すわる)の意から)
[一] 身分上の地位。
① (天皇の玉座の意から) 天皇の地位。皇位。また、天皇の地位にあること。在位。
※続日本紀‐天平宝字二年(758)八月一日・宣命「年長く日多く此の座(くらゐ)に坐せば」
(イ)
皇族・
臣下の朝廷での席次。その制度は推古天皇一一年(
六〇三)の冠位十二階に始まり、数次の改訂を経て、大宝令(
七〇一)の位階制が平安時代以降も長く行なわれた。
親王・内親王は一品
(いっぽん)から四品
(しほん)までの四階、諸王臣下は位と称して一位から初位(八位の
下位)まで九等級を、それぞれ正・従(初位は大・少)に分け、四位以下はさらに上・下を区別して三〇階とした。
※
書紀(720)天武一四年正月(寛文版訓)「更に爵位
(クラヰ)の号を改む。仍て階級
(しなしな)を増し加ふ。明位
(みょうゐ)二階、浄位四階、階毎に大広有り」
※
徒然草(1331頃)三八「位高くやんごとなきをしも、すぐれたる人とやはいふべき」
(ロ)
僧侶の
功績を賞して朝廷から賜わる位階。僧位。
※三代格‐三・貞観六年(864)二月一六日「定二僧綱位階一事。〈略〉国典所レ載、僧位之制、本有二三階一、満位・法師位・大法師位是也」
(ハ) 明治二二年(
一八八九)以降、
華族、勅奏任官、または国家に功労のあった者を表彰するために与える称号。一位から八位までを各正・従に分け、一六階とする。四位以上は
勅授、五位以下は奏授された。
③ 特定の社会集団での地位、身分の上下関係。階級。
格式。また、その重要な地位。
※十問最秘抄(1383)「点者の位の人は、
才覚は殊にありたし」
※
歌舞伎・韓人漢文手管始(
唐人殺し)(1789)三「こちの抱
(かか)へは名山といふて、松の位の太夫職」
[二] (令制下、官職にはそれに相当する位階が定められていて、たとえば
左大臣は正・従二位、
大納言には正三位の者を任じるというように、位を以て官をも表わしたところから) 官職の地位。つかさ。身分。
※古事記(712)下「先づ大臣の位(くらゐ)を給ひて、明日上り幸(い)でまさむ」
※更級日記(1059頃)「后のくらひも何にかはせむ」
[三] 特定の分野での、力量の程度や到達し得た境地。
※観智院本三宝絵(984)下「六根をきよめて仏の境界に入り、諸のさはりをはなれて菩薩の位に入むと思ひ」
※徒然草(1331頃)一五〇「堪能のたしなまざるよりは、終に上手の位にいたり」
[四] 人、または作品の品位。風格。貫祿。
※所々返答(1466‐70)「句の面白をば、傍(かたはら)になして、ひとへに位に心をかけ、たけ、面影、しなを旨とすべしとなり」
※俳諧・
去来抄(1702‐04)修行「牡年曰、『附句の位とはいか成事にや』去来曰、『前句の位を知りて附る事也〈略〉』」
[五] 兵法で敵を制圧する位置。陣形。
※軍法極秘伝書(1579頃か)四「味方着陣の夜、物見をつかひくらゐを見、夜討をする事習ひなり」
[六] 囲碁・将棋の用語。(五)から、将棋では敵陣を制圧する位置。盤面の中央に最も位があるとされる。将棋の格言に「5五の位は
天王山」とある。
[七] 十進法で、数を表わしたときの並べられた数字の位置。「百の位」「千の位」「十分の一の位」などという。二進法、五進法などでも準用される。
[2] 〘副助〙 (「ぐらい」とも。体言または活用語の連体形をうけて程度を表わす。中世以後、生じた用法)
① おおよその数量・程度を示す。ほど。ばかり。
※虎明本狂言・鏡男(室町末‐近世初)「
かしらをゆへは十位
(クラヰ)も二十くらひもうつくしう見ゆると申が」
※歌舞伎・傾城仏の原(1699)一「越前の国主を梅永刑部殿と申すは、某と同年位と聞く」
② 比較の基準を示したり、あるいは、程度を軽いもの、または、重いものとして強調したりする。ほど。ばかり。
※
太平記(14C後)二九「げにも頭を延べて参る位ならば」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「食物本草とも言れるくらいな大愚先生だから」
[語誌]((二)について) (1)
副助詞としての用法は、古代には「ばかり」が担っていたが、中世には「ほど」に移り、中世以降、次第に「くらい」が用いられるようになった。用例は、江戸時代後期になると口語資料に多く見られるようになる。地の文では、江戸時代後期になっても「くらい」よりも「ほど」が用いられることが多い。
(2)江戸時代には、名詞に付くばあいは濁音、コ・ソ・ア・ドに付くばあいは清音、活用語に付くばあいは清濁両形をとる傾向がある。
(3)ほとんどのばあい「ほど」と置き換えが可能であるが、②の用法のうち「程度を軽いものとして強調する」用法については、「ほど」と置き換えができない。