[1] 〘名〙 (動詞「あまる(余)」の
連用形の名詞化)
① 必要な分を満たした残り。残余。余分。超過分。
※
古事記(712)下・歌謡「
枯野(からの)を 塩に焼き 其
(し)が阿麻里
(アマリ) 琴に作り」
※
徒然草(1331頃)一二三「なすべき事おほし。そのあまりの暇、幾
(いくばく)ならず」
② (上に行動や気持などを表わす連体修飾句が付いて) 行動や気持などが普通の程度を超えること。過度になった結果。
※
古今(905‐914)
仮名序「
もろもろの事をすて給はぬあまりに、いにしへの事をも忘れじ、ふりにし事をもおこし給ふとて」
※土左(935頃)承平五年二月五日「よろこびのあまりに、あるわらはのよめる歌」
③
割り算で、割り切れないで出た残り。割り切れるときは、「0」を余りとする。
④ ある限度に達するまでのゆとり、余地。使わない、または達しないで残っている部分。
⑤ 酢をいう忌み詞。発酵の過程でいったん甘くなることからいうともする。
※
七十一番職人歌合(1500頃か)七一番「さもこそは名におふ秋の夜半ならめあまり澄たる月の影哉〈略〉あまりといひて、すとは聞えたるを、かさねてすとよめるやいかが」
[2] 〘形動〙 必要、期待以上であるさま。程度のはなはだしいさま。あんまり。
※万葉(8C後)一八・四〇八〇「常人の恋ふといふよりは安麻里(アマリ)にてわれは死ぬべくなりにたらずや」
※平家(13C前)九「余りのいぶせさに、目をふさいでぞおとしける」
※
たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉一三「余
(アマ)りな人とこみ上るほど思ひに迫れど」
[3] 〘副〙
① 物事の程度が、必要、期待以上に及ぶさまにいう。度を過ぎて。非常に。あんまり。
※枕(10C終)二七「あまり心よしと人にしられぬる人」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「あまりうちしきる折々は」
② (下に打消の語を伴って) それほど(…ではない)。たいして。あんまり。
※枕(10C終)三一「いとあまりむつまじうもあらぬまらうど」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈
夏目漱石〉一「強い許りでちっとも教育がないからあまり誰も交際しない」
[4] 〘接尾〙
① 数量を表わすことばに付いて、それよりもいくらか多い意を表わす。
※書紀(720)神代下(水戸本訓)「背の長さ七尺(ひろ)余(アマリ)」
※源氏(1001‐14頃)帚木「ななとせあまりがほどに」
② 一〇以上の数を表わす場合に、数詞と数詞の間に入れて用いる。