作・造(読み)つくる

精選版 日本国語大辞典「作・造」の解説

つく・る【作・造】

〘他ラ五(四)〙
[一] 新しく創造する。また、材料・素材に手を加えて、もとと違った新しいものにする。
① 新しくものをこしらえる。製造する。製作する。組み立てる。
※古事記(712)上・歌謡「八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣都久流(ツクル)その八重垣を」
② 手を加えて、目的に従った形、状態にする。
(イ) 開墾する。耕作する。たがやす。
※古事記(712)下・歌謡「あしひきの 山田を豆久理(ツクリ) 山高み 下樋を走(わし)せ」
(ロ) 品物を加工する。また、品物として生産する。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「この籠(こ)は、金(かね)をつくりて、色どりたる籠なりけり」
(ハ) 食べるために調理する。料理する。「刺身(さしみ)につくる」 〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
※今昔(1120頃か)二「大なる魚捕得たりと喜て、即ち俎に魚を置て作らむとす」
(ニ) 酒類を醸造する。かもす。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※虎寛本狂言・伯母が酒(室町末‐近世初)「扨当年もまた酒を作らせられて御ざるか」
(ホ) 栽培する。
※延喜式(927)祝詞「天の下の公民の作り作る物は、五(いつくさ)の穀(たなつもの)を始めて、草の片葉に至るまで」
③ 文字や図に書いて表わす。著述する。
(イ) 文章、書類、論文などを書く。
※霊異記(810‐824)上「勝鬘法花等の経の疏を製(ツクリ)、法を弘め物を利し〈興福寺本訓釈 制 作也〉」
※源氏(1001‐14頃)須磨「よもすがらまどろまず文(ふみ)つくりあかし給ふ」
(ロ) 詩歌を詠ずる。よむ。
※土左(935頃)承平五年一月二〇日「かの国人、むまのはなむけし、別れ惜しみて、かしこのからうた、つくりなどしける」
(ハ) 図面などにかいて表わす。「設計図を作る」「表をつくる」
(ニ) (「…に作る」の形で) ある文字の異体をある形で表わす。「『事』は古くは『』につくる」
④ 人の身に備わる抽象的な事柄を形成する。
(イ) 人格、性格などをかたちづくる。育てる。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「法を聞くいは是れ人を造(ツクリ)、天身を造り、菩薩を造り、仏を造るぞ」
(ロ) 罪、徳などを自分のものにする。身にする。行なう。
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫は、罪を作り給へりければ」
⑤ 組織、制度、規則などを設ける。創設する。編成する。「前例をつくる」
※私聚百因縁集(1257)五「一百二十三人、蓮社を為(ツクル)
⑥ 大きな声を出す。
(イ) 軍勢がときの声をあげる。
※曾我物語(南北朝頃)五「呉のつは者三十万騎、かち時をつくりて」
(ロ) 鶏が早朝鳴いて時をしらせる。
⑦ 金銭を工面してととのえる。また、まとまった財産・借財などを持つようになる。こしらえる。
※福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉一身一家経済の由来「私が有らん限りの才覚をして金を造(ツクッ)た」
⑧ ものをある形に排列する。「指で円をつくる」
※歩兵操典(1928)第一五四「側面縦隊より同方向に中隊縦隊を作らしむる」
⑨ ある目的のための時間や機会を生み出す。「ひまをつくる」「チャンスをつくる」
⑩ (「子をつくる」の形で) 産む。子どもをもうける。
※鳩を撃つ(1970)〈五木寛之〉「どうだ、子供を作るか」
⑪ 友人、愛人などを新しく得る。
※安吾巷談(1950)〈坂口安吾〉ストリップ罵倒「踊り子は自分で男をつくる」
⑫ 囲碁で、終局の際計算しやすいように形をつくりなおす。まずダメを詰めながら手入を行ない、死石を取り上げて従来のハマといっしょに相手の地に埋め、形をなおす。
※土佐国風俗記(1836か)下「殆ど喧嘩となり、固より作るに及ばず、石をさらりと突崩して立」
[二] 表面的な事柄をつくろう。故意につくろう。
① わざと、または、いつわってそのような風をする。表情などをいつわる。ふりをする。
※伊勢物語(10C前)二三「はじめこそ心にくもつくりけれ、今はうちとけて」
② そのように似せてこしらえる。「花形につくる」
※古今(905‐914)秋上・二四八・詞書「遍昭が母の家にやどりたまへりける時に、庭を秋の野につくりて」
③ ないことをあるように述べる。いつわって言う。仮作して言う。
※続日本紀‐神護景雲三年(769)九月二五日・宣命「此を見るに、面の色形、口に云ふ言、猶明かに己が作りて云ふ言を、大神の御命と借りて云ふと知しめしぬ」
④ 形を整える。飾る。飾りたてる。
※源氏(1001‐14頃)明石「御車は二なくつくりたれど、所せしとて、御馬にて出で給ふ」
⑤ 化粧する。めかす。
※洒落本・通人の寐言(1782)上「ききらきんと、かかアにもつくらせて見せへだしてをいて」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「こってりと、人品を落すほどに粧(ツク)って」

づくり【作・造】

〘語素〙 (動詞「つくる(作)」の連用形から)
① 名詞について、そのものをつくること、また、ととのえることの意を表わす。「顔づくり」「国づくり」「人づくり」など。
※玉塵抄(1563)三一「それがくら一の米を所望して五石づくりの酒の入る大樽に一ぱい入れうと云たぞ」
② 名詞について、その物を材料として、または、そのものを使ってつくることを表わす。「粘土づくり」「機械づくり」「手づくり」など。
③ 名詞や形容詞・形容動詞の語幹などについて、そのようにつくりととのえる意を表わす。「書院づくり」「若づくり」「派手づくり」など。
※歌舞伎・染替蝶桔梗(1816)二番目序幕「まだ仄暗き別れ道、跡より仕掛ける悪者づくり、無理な喧嘩の手の廻り」

つくり【作・造】

〘名〙 (動詞「つくる(作)」の連用形の名詞化)
① 物を作ること。また、作ってできあがった様子。造作。構造。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)唐船「ゆられ寄るは珍しい作りな船」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一〇「江戸の槖駝師(うへきや)が腕をふるった庭の作りは」
② 耕作すること。また、農作物。
※玉塵抄(1563)九「伊尹は有莘(しん)と云所の野につくりした者ぞ」
③ 魚などの刺身(さしみ)。おつくり。つくりみ。
※雑俳・冠独歩行(1702)「いそがしや・涼の鯉の作り売」
※兵隊の宿(1915)〈上司小剣〉七「造身(ツクリ)を十人前出けまへんやろかて」
④ 書かれた文字・絵などの様子。書きよう。
※浜松中納言(11C中)一「からの薄紫の紙に書ける文字のつくり、筆のさきら、いとかしこくおもしろき奥のかたに」
⑤ 歌舞伎の狂言作者。
※洒落本・祇園祭挑燈蔵(1802)初幕「私が宿へまいったらつくりの所で〈作者の事也〉正本をかりて来ておめにかけやしゃう」
⑥ よそおうこと。
(イ) (「おつくり」の形で) 化粧(けしょう)
(ロ) よそおい。身なり。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「『子が三人有ながら、浅黄縮緬の裁(きれ)をかけてさ』『ヲヤ、ほんにねへ、若い作(ツク)りだね』」
(ハ) 身構えた表情や態度。また、そういう態度をとること。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三「已に母の不承知に出会って、焦躁して堪らぬ所へ、顔が真向正面つくりもかざりも無い拒絶を受けて、伯父の怒は終に破裂した」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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