精選版 日本国語大辞典 「作手」の意味・読み・例文・類語
さく‐て【作手】
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(1)平安時代中期ごろから鎌倉時代にかけてみられる,土地に対する一定の権利をさす言葉。この権利は,先祖相伝や買得によって得られるのみでなく,開発によっても発生し,また,相続,譲渡,売却することもできる。その権利の内容については,(a)耕作権(占有権)とみる説と,(b)下級所有権とみる説とがある。(a)は古くからの通説ともいえる説であるが,この説では,作手を有期的耕作権(占有権),永作手(ながつくて)を永代耕作権(占有権)とみる。これは,名(みよう)・名田を名主(みようしゆ)の所有地,経営地とみる,かつての通説を背景として生まれたものである。つまり,作手を名田=所有地の下に発生する権利であるとみて,それを所有権より弱い権利すなわち耕作権(占有権)とみなしたのである。また,作手=耕作権とするこの説は,作手という言葉からごく自然に連想されるので,受け入れられやすい説でもあった。ところが,第2次大戦後(b)の説が生まれた。これは,名を所有地,経営地とみずに,収納単位とみる説を背景としている。この説は,作手は先祖相伝,買得によってのみでなく,開発によっても得られる権利であり,また相続,譲渡,売却しうること,作手が所領,私領,領田などといいかえられ,その作人が領主,地主とよばれている例も多いこと,作手の領知を国が認めている例があること,などの事実認識にささえられている。なお,この説では,作手も永作手も本質的には同一で,ともに下級所有権とみている。それは,作手が永作手といいかえられている例のあること,両者の初見にさほど年代的へだたりがないこと,などの理由による。近年では,この説が有力視されているが,定説といわれるまでにはいたっていない。
作手という言葉の初見は1012年(長和1)1月22日の和泉国符(案)であり,以後,鎌倉時代にかけて,土地売券や譲状に多くみられるが,鎌倉時代末期から減少し,南北朝期以降になるとほとんどみられなくなる。いれかわりに作職(さくしき)といった言葉がみられるようになるので,作手は作職に変化するとする説もあるが,具体的に証明されているわけではない。作手は,〈さくて〉ともよまれているが,かなで書かれる場合は,ほとんどが〈つくて〉となっている。
(2)古代から中世にかけてみられる言葉で,職人あるいは手工業者という意味。古代では,宮内省掃部寮に作手8人がいたことなどが知られており,また中世では,蔵人所に所属する作手(灯炉御作手鋳物師)が有名であり,その他,白炭作手,筥松作手,薪作手などもみられる。
執筆者:中野 栄夫
→作手(つくて)
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…この場合,領主側が土地をあてがうことを〈散田(さんでん)〉と称し,これに対して田堵は当該田地を預かり相違なく地子を弁進する旨誓約した文書=請文(うけぶみ)を提出して耕営に従事したのであり,これが請作である。請作者の請作地に対する占有用益権を〈作手(つくて∥さくて)〉と呼んだ。請作は,令制下で口分田を班給した残りの公田を年ごとに農民に割り当てて耕作させ地子をとった賃租に系譜を引くもので,契約は1年ごとに更新されるのを原則とした。…
…赤土器は食器に,白土器は食器または灯明皿等に用いられた。座の統轄者は兄部(このこうべ)または作手,一般座衆はこれに対し座子と呼ばれた。両者ともに一乗院,大乗院という興福寺別当の地位を独占的に有する両門跡に従属し,人夫役等の諸役を免除され,赤土器座の兄部は荘園の所領を給されるなど特典を与えられる一方,その課する役をつとめていた。…
…その権利の内容については,(a)耕作権(占有権)とみる説と,(b)下級所有権とみる説とがある。(a)は古くからの通説ともいえる説であるが,この説では,作手を有期的耕作権(占有権),永作手(ながつくて)を永代耕作権(占有権)とみる。これは,名(みよう)・名田を名主(みようしゆ)の所有地,経営地とみる,かつての通説を背景として生まれたものである。…
…この場合,領主側が土地をあてがうことを〈散田(さんでん)〉と称し,これに対して田堵は当該田地を預かり相違なく地子を弁進する旨誓約した文書=請文(うけぶみ)を提出して耕営に従事したのであり,これが請作である。請作者の請作地に対する占有用益権を〈作手(つくて∥さくて)〉と呼んだ。請作は,令制下で口分田を班給した残りの公田を年ごとに農民に割り当てて耕作させ地子をとった賃租に系譜を引くもので,契約は1年ごとに更新されるのを原則とした。…
※「作手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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