精選版 日本国語大辞典 「俏・窶」の意味・読み・例文・類語
やつし【俏・窶】
〘名〙 (動詞「やつす(俏)」の連用形の名詞化)
① 身をやつすこと。みすぼらしく変えた姿。また、剃髪した姿。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「一代地を踏ませぬお家さまと、供ゆべき心入にて、此比かうしたやつしをせしが」
※評判記・難波立聞昔語(1686)竹嶋幸左衛門「好色も人よりこゑてすぐといふやつしも実も人に越つつ」
③ ②の衣装。
④ ②の鬘(かつら)。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)七「あたまはまきびんにて、しばいのやつしといふかみなり」
⑤ (②から) やさ男。色男。二枚目。
※洒落本・当世嘘之川(1804)五「をれがやうなやつしが出入したら、富さんのからだに生疵は絶まい」
⑥ 似せて作ること。まねること。また、そのもの。
⑦ おしゃれをすること。美しく着飾ること。うわべを飾りたてること。また、その人。めかし屋。
※洒落本・十界和尚話(1798)五「あの姉めは大のやつしでござり升」
⑧ うわべだけのこと。
やつ・す【俏・窶】
〘他サ五(四)〙
① みすぼらしいようにする。目立たないように姿などを変える。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「故(ことさら)に形を費(ヤツシ)、身心をば一切の人の下に作し」
② そのことにうち込んで、やせるほどに思い悩む。心身を砕く。
※桜井基佐集(1509頃)恋「されば又命のほども知れたるに叶ぬ恋に身をぞやつせる」
③ 剃髪(ていはつ)する。出家する。
※伊勢物語(10C前)一〇四「尼になれる人有りけり。かたちをやつしたれど、物やゆかしかりけむ」
④ 物事を省略する。簡略にする。また、きちんとしたものをくずす。略す。〔邇言便蒙抄(1682)〕
⑤ 行儀をくずす。うちとけた様子にする。
※評判記・難野郎ふるたたみ(1666頃)玉むら吉彌「すこしりゃくしだてに御やつしなされ候はば」
⑥ ある物に似せて作る。まねて作る。また、もじったり、当世化、パロディー化したりする。
⑦ 容姿をつくる。化粧する。めかす。しゃれる。
※洒落本・契情買虎之巻(1778)二「『きみけいせいとやつしいすが、心のうちはこれみなんし』としろむくの間にかけたる五条げさ」
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