倍音(読み)バイオン(英語表記)harmonics 英語

デジタル大辞泉 「倍音」の意味・読み・例文・類語

ばい‐おん【倍音】

上音の一。振動体の発する音のうち基音振動数の整数倍の振動数をもつ部分音ハーモニックス

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精選版 日本国語大辞典 「倍音」の意味・読み・例文・類語

ばい‐おん【倍音】

〘名〙 振動数のもっとも少ない基音に対して、その整数倍の振動数をもつ部分音。たとえばピアノハ音を鳴らすとき、それに伴って響くホ音、ト音などのこと。基音の音色をゆたかにし、和音構成の働きをもする。音響学では上音という。ハーモニックス。
※瀬山の話(1924)〈梶井基次郎〉「独唱曲を低音の合唱に演繹し、次にそれの倍音を探りあて」

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百科事典マイペディア 「倍音」の意味・わかりやすい解説

倍音【ばいおん】

基本音(基音)の整数倍の振動数をもつ上音をいう。一つの発音体が発する音は一般に複数の成分音(部分音)の集合として成り立ち,そのうち最も振動数が少なく,楽音の音高(音の高さ)を決定する音を基本音fundamental tone,これより振動数の多い音を上音overtoneという。倍音harmonic overtone,harmonicsは,基本音の2倍の振動数のものがそのオクターブ上,3倍はその5度上,4倍は2オクターブ上,5倍はその長3度上といったぐあいに生じ,基本音のn倍の振動数の倍音を第n倍音とそれぞれ呼ぶ。弦や管(空気柱)の振動によって得られ,各楽器の音色を決定する大きな要素となる。弦楽器には,倍音のみを発する特殊奏法フラジョレット(ハーモニックス)がある。
→関連項目管楽器トライアングルホルンらっぱ(喇叭)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「倍音」の意味・わかりやすい解説

倍音
ばいおん
harmonics 英語
harmonischer Oberton ドイツ語

一つの音を構成する部分音は、最小振動数の基音と、それ以外の上音である。上音のなかでも、基音の整数倍振動数をもついくつかの部分音(たとえばオクターブ上、さらに五度上、……)を倍音という。倍音は、相互の強さ関係とその時間経過上の変化に応じて、歌声や楽器音の音色を決定する。気鳴楽器を強く吹いたときの甲高い音や、弦鳴楽器のハーモニックス奏法(たとえば弦長の2分の1のところに軽く指を触れた状態で弾弦したときに得られる澄んだ音)は、とくに倍音効果を強調したものである。モンゴルホーミーとよばれる倍音唱法の場合、男性が低い基音をドローン(持続低音)として響かせると同時に、口腔(こうくう)の形や舌の位置を微妙に変化させることにより一瞬一瞬のうちに強調する倍音を連鎖的に交代させ、結果として高音部旋律をつくりだすため、「1人で二つの声を出す」ような印象を与える。

山口 修]

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「倍音」の解説

倍音

ある音の振動数に対し、整数倍の振動数をもつ音。2倍音なら1オクターブ上、3倍音ならば1オクターブと完全5度上……と連なる。自然音や楽器にはこうした倍音が多く含まれるが、デジタル化した音楽データでは周波数が制限されるためカットされてしまう。CDでは20kHz、DVD-Audioでは96kHzが再生できる範囲となっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「倍音」の意味・わかりやすい解説

倍音
ばいおん
harmonics

音楽用語。基音の振動数に対して整数倍の振動数をもつ上音をいう。弦や管 (空気柱) の振動には,常に倍音が含まれる。整数比と音程の関係は,1:2=オクターブ,2:3=5度,3:4=4度,4:5=長3度,5:6=短3度のようになる。

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世界大百科事典(旧版)内の倍音の言及

【音】より

…部分音のうちで振動数のもっとも低いものを基本音,それ以上の振動数の部分音を順次第1上音,第2上音,……という。とくにこの例のように上音の振動数がすべて基本音の振動数の整数倍であるときには,第2倍音,第3倍音,……という。また実在する音には,図のdのように音圧波形が不規則に変化し,同じ波形を繰り返さない音が多い。…

※「倍音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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