偶・適・会(読み)たまたま

精選版 日本国語大辞典 「偶・適・会」の意味・読み・例文・類語

たま‐たま【偶・適・会】

〘副〙 (「に」を伴って用いることもある)
① その場合とか機会とかがまれではあるが何度かあるさまをいう。時おり。ときたま。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「たまたま『まゐらせ給ふ』とものせしかど」
※俳諧・十八番発句合(1678)跋「其かたはらに筆をけがして、上・中・下の品をわかち侍るをたまたまにもうなづく人有(あれ)かしとこそ」
② その場合とか機会とかが偶然であるさまをいう。偶然に。ふと。
※廬山寺文書‐天祿三年(972)五月三日・天台座主良源遺告「但本覚房文書年来散失、無有其遺、適所有者、是山城読師千雲所進也」
源氏(1001‐14頃)胡蝶「知らぬ世にまとひ侍りしをたまたまおほやけに数まへられたてまつりては」
③ ごくまれではあるが、ひょっとしてそうなるとか、そうなるかもしれないとかいう気持を表わす。ひょっとして。どうかして。もしかして。
※文鏡秘府論保延四年点(1138)「若、偶(タマタマ)音響に中らば、十九首の流なり」
方丈記(1212)「念じわびつつ、さまざまの財物、かたはしより捨つるがごとくすれども、更に目見立つる人なし。たまたま換ふるものは金を軽くし、粟を重くす」
④ 予期したことが実現するとか、実現してよかったとかいう気持を表わす。折よく。折があって。運よく。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇「属(タマタマ)有道に逢ふ。時惟(ときこれ)我が皇なり」
[語誌]和文資料では、「宇津保物語」「枕草子」「和泉式部日記」「栄花物語」などに散見するが、「蜻蛉日記」「更級日記」「紫式部日記」などには見えない。また、「方丈記」や「徒然草」では「たまたま」があって「たまさか」がないこと、「源氏物語」では他はすべて「たまさか」が用いられているが、光源氏のことば一例のみが「たまたま」であることなどから、男性語であると考えられる。→「たまさか(偶)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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