偶・適(読み)たま

  • たまさか

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (形動) めったにないこと。まれであること。また、そのさま。
※御伽草子・六代(室町時代物語大成所収)(室町末)上「たまにこととふものとては、みねにこづたふむらざるの」
※門(1910)〈夏目漱石〉四「思ひ掛けない程稀(タマ)な客なので」
〘名〙 (形動)
① 思いがけないさま。偶然であるさま。
※万葉(8C後)一一・二三九六「玉坂(たまさかに)吾が見し人を如何にあらむ縁(よし)をもちてかまた一目見む」
※霊異記(810‐824)上「邂逅(タマサカニ)児有る家に次(やど)り、遂に是の子を得たり。〈興福寺本訓釈 上音解反下后反 二合太万左加爾〉」
② まれであるさま。その場合とか機会が数少ないさま。
※落窪(10C後)四「よき帯などたまさかにありけるなども、皆大将殿に奉り給ふ」
※くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉一「偶(タマ)さかの来客も冷へた茶一杯で追返され」
③ めったにないさま。あまり期待できないが、ひょっとしてそうなるさま。多く、「に」「にも」を伴って副詞的に用いられる。
※竹取(9C末‐10C初)「若し天竺(てんぢく)にたまさかにもて渡りなば」
※源氏(1001‐14頃)若紫「たまさかにも、おぼし召しかはらぬやう侍らば〈略〉必ず、かずまへさせ給へ」
[語誌](1)奈良時代の用例は①の意と解されるが、平安時代になるとこの意は「たまたま」が担い、「たまさか」は時間的に長い間隔があることを意味する②、あるいは仮定条件句とともに用いられて③の意を表わすようになった。
(2)女性の手になる作品、たとえば「蜻蛉日記」では「たまさか」は使用されているが「たまたま」は現われない。また、他の女流作品でも「たまたま」は僅少である。一方、男性の手になる「方丈記」や「徒然草」には「たまさか」は見られないという事実から「たまさか」は女性的な用語であったと思われる。→「たまたま(偶)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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[生]1960.10.30. ブエノスアイレスアルゼンチンのサッカー選手。アルゼンチンリーグ 1部に史上最年少の 15歳でデビュー。代表チームにも 16歳4ヵ月の最年少デビューを果たした。1979年,...

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