傾・雪崩・頽(読み)なだれ

精選版 日本国語大辞典 「傾・雪崩・頽」の意味・読み・例文・類語

なだれ【傾・雪崩・頽】

〘名〙 (動詞「なだれる」の連用形の名詞化) なだれること。
① 斜めに傾いていること。傾斜。特に、山や川岸などの傾斜している所。傾斜面。傾斜地。なだり。
※俳諧・骨書(1787)上「二三枚土手のなだれに蓙敷(ござしき)て〈青蘿〉 日和うれしく仰向に寐る〈檽良〉」
② 傾斜地などに積もった雪が、傾斜面を一時に大量にくずれ落ちる現象。《季・春》 〔運歩色葉(1548)〕
③ 一般に、くずれ落ちること。また、そのもの。
※俳諧・誹諧発句帳(1633)秋「露霜は月の有明のなだれかな〈貞徳〉」
④ 歌舞伎の大道具で、土手・坂道などに急な傾斜をつけること。
※歌舞伎・鳴神(日本古典全書所収)(1742か)「高さ五尺、なだれ七尺ばかりのかき上げ土手」
⑤ 歌舞伎下座音楽の一つ。雪の場面で、積雪の一時にくずれ落ちる音を表わす囃子大太鼓に長撥(ばち)を平らにつけて強く打つ。雪おろし。
⑥ 陶芸品で、釉(うわぐすり)が肩からなだれるようにさがっている状態をいう。
※宗達茶湯日記(他会記)‐天文一八年(1549)正月六日「なたれ一筋在」

なだ・れる【傾・雪崩・頽】

〘自ラ下一〙 なだ・る 〘自ラ下二〙
① 斜めに傾く。傾斜する。
太平記(14C後)二〇「西へなだれたる尾崎平地につづきたれば」
② 斜めにくずれ落ちる。くずれて、しだいにすべり落ちる。崩壊する。特に、雪や土砂などが、くずれ落ちる。
※為尹千首(1415)夏「今日いくか猶五月雨のふるはたをなだれて埋む山のしゐ柴」
③ 勢いよく、おし寄せる。人波などが、一時に、どっとあふれるように揺れ動く。また、軍勢などが敗走する。
御伽草子鴉鷺合戦物語(室町中)「南へなだれんずるところを、〈略〉野伏どもに横矢に射殺させ」

なだ・る【傾・雪崩・頽】

〘自ラ下二〙 ⇒なだれる(傾)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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