傾城(歌舞伎舞踊)(読み)けいせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「傾城(歌舞伎舞踊)」の意味・わかりやすい解説

傾城(歌舞伎舞踊)
けいせい

歌舞伎(かぶき)舞踊の一ジャンル。「傾城」といわれた最上級の遊女の風俗を描いたもの。その数は多いが、たいていは変化舞踊の一つとしてつくられた長唄(ながうた)の曲で、伊達兵庫(だてひょうご)という髪型に裲襠(うちかけ)姿の正装で傾城が登場、その心境風格のなかに見せるもの。歌詞の冒頭の一句か、初演俳優の名をとった通称でよばれる。(1)現存最古の曲は1811年(文化8)3月、江戸・市村(いちむら)座で3世中村歌右衛門(うたえもん)初演の「仮初(かりそめ)の傾城」(七変化『遅桜手爾葉七字(おそざくらてにはのななもじ)』の一つ)である。以下おもな作品は次のとおり。(2)3世坂東(ばんどう)三津五郎初演「門(かど)傾城」(『四季詠寄三大字(しきのながめよせてみつだい)』1813)、(3)7世市川団十郎初演「後朝(きぬぎぬ)傾城」(『拙業再張交(へたざいくにどのはりまぜ)』1814)、(4)同「初雁(はつかり)傾城」(『復新三組盞(またあたらしくみつのさかずき)』1824)、(5)2世中村芝翫(しかん)(4世歌右衛門)初演「恋(こい)傾城」、別称芝翫傾城」(『拙書力七以呂波(にじりがきななついろは)』1828)、(6)同「秋傾城」、別称「八月傾城」(『花十二月所作(はなきょうだいねんじゅうぎょうじ)』1840)、(7)4世市川小団次初演「小団次の傾城」(『寄三升花四季画(よせてみますはなのにしきえ)』1854)、(8)4世中村芝翫初演「雪傾城」(『月雪花名歌姿絵(つきゆきはなめいかのすがたえ)』1865)など。

[松井俊諭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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