僅・纔(読み)わずか

精選版 日本国語大辞典 「僅・纔」の意味・読み・例文・類語

わずか わづか【僅・纔】

〘形動〙
① 数量などの少ないさま。いささか。少しばかり。単独で副詞的にも用いる。〔新訳華厳経音義私記(794)〕
※枕(10C終)二八「わづかに聞きえたる事をば、我もとより知りたることのやうに」
程度、度合の少ないさま。副詞的に、辛うじて、やっとのことで。
※小川本願経四分律平安初期点(810頃)「十種の衣の中に趣(ワツカニ)一衣を用ゐて嚢に作ること聴す」
※増鏡(1368‐76頃)二「その一門亡びしかば、この比は、わづかにあるかなきかにぞ、まがよふめる」
③ 小さいさま。狭いさま。また、ささやかで粗末なさま。貧弱なさま。
更級日記(1059頃)「木の下のわづかなるに、葵のただ三筋ばかりあるを」
※東関紀行(1242頃)前島より興津「わづかなる草の庵のうちに一人の僧あり」
分量や程度を多く見積もっても問題とするに足りないさま。単独で副詞的にも用いる。せいぜい。たかが。
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)下「たんごはわづかせう国とは申せども」
[語誌](1)「はつか」とは、第二音節の清濁も異なり、意味も開きがあるので、派生関係はないと思われる。ハツカはハツ(初)やハツハツと同根で、物の先端がちらっと見えるといった、対象の不確定・不十分な認識を表わすのが本来の意。「名義抄」では「緬」字の訓としてハルカニ、ホノカニなどとともにハツカニが挙がっている。
(2)のちに、ハツカがワヅカの雅語的な表現と見られるようになるのは、ハツカが概ね和文に用いられ、ワヅカが和歌にほとんど用いられないなどの文体的な偏在が関与しているためか。→「はつか」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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