兎角・左右(読み)とかく

精選版 日本国語大辞典 「兎角・左右」の意味・読み・例文・類語

と‐かく【兎角・左右】

[1] 〘副〙 (副詞「と」と副詞「かく」を合わせたもの。「兎角」「左右」は、ともに当て字)
① 雑多な事態を包含的に指示する。あれこれ。あれやこれや。何やかや。さまざま。いろいろ。とかくに。
※竹取(9C末‐10C初)「蓬莱の玉の枝を、ひとつの所あやまたずもておはしませり。何をもちてとかく申すべき
平家(13C前)一〇「あまりのおぼつかなさに、とかくして八嶋へ人をたてまつり給ひたりければ」
② ある事態の詮索拘泥を打ち切って、判断や意志を決めようとする気持を表わす。いずれにせよ。何はともあれ。ともかくも。とにかくに。とかくに。
謡曲・丹後物狂(1430頃)「さてもさても命は惜しいものかな、とかく投げられぬ」
滑稽本浮世風呂(1809‐13)前「兎角(トカク)食物が納り兼まして、食べると尾籠ながら吐まする」
③ ある一つの状態が、特定の条件を要するまでもなく、成り立ちやすいという気持を表わす。何かにつけて。得てして。どうかすると。ともすれば。とかくに。
※虎明本狂言・賽の目(室町末‐近世初)「とかくわれらがやうなるものは、算用がたっせねばまかりならぬ」
※人情本・花街寿々女(1826)上「兔角(トカク)浮世は儘ならぬ」
④ (「とかくの」の形で) あれこれとよくないさま。「とかくの評判
[2] 〘名〙 雑多な事態そのものをさす。種々様々の事。種々様々の言葉。また、そこに含まれる一つの具体的な事柄を暗示することもある。
源氏(1001‐14頃)藤袴「『いかで人わらへなるさまにみききなさむ』とうけび給ふ人々もおほく、とかくにつけてやすからぬことのみありぬべきを」
俳諧去来抄(1702‐04)先師評「先師暫く吟じて、兎角をのたまはず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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