兜・冑・甲(読み)かぶと

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① 頭部防御の武具。軍陣用としては、頭にかぶる部分である鉢(はち)とその下に垂れて首の部分をおおう錏(しころ)からなる。鉢の頂きを頂辺(てへん)、通俗には八幡座(はちまんざ)ともいい、鉢の正面のところを真向(まっこう)という。製法や形状により、多くの種類がある。
※書紀(720)天武元年五月(北野本訓)「甲(よろひ)(カフト)、弓矢を以て郭務悰等に賜ふ」
② 舞楽の楽人や舞人がかぶる、鳳凰(ほうおう)の頭にかたどった冠。とりかぶと。
※栄花(1028‐92頃)鳥の舞「頭(かしら)にはかぶとといふものをして、いろいろのおどろおどろしういみじき唐錦どもを着て」
③ 「かぶとにんぎょう(兜人形)」の略。〔日本歳時記(1688)〕
④ 「かぶとがた(兜形)②」の略。
※雑俳・末摘花(1776‐1801)一「おこし元おかぶとでならいやといふ」
⑤ 紋所の名。柏立て兜、筋兜、立て烏帽子兜、破軍立兜(はぐんだてかぶと)、星兜、龍頭兜(りゅうずかぶと)等の種類がある。
[語誌](1)平安時代から鎌倉時代にかけて、大鎧(式正鎧)に具足した①は星兜とよばれるが、鉢の部分をなす鉄地板矧合せ留めの鋲頭(星)は椎実形に高く鉢表面に突起している所からこの名がある。吹き返しとよばれる顔脇の錏(しころ)を折り返し革を張った部分に、金具を打ちつけたり、真向に鍬形などの飾り金具を備えたものもある。
(2)南北朝期から室町時代に入ると、より軽便な胴丸鎧や腹巻が流行し、それに伴って①も、星を略して矧合の筋を立てた筋兜が主流となる。鉢もやや大型化し、より衝撃を防ぐような機能が向上する。
(3)戦国時代以降、鉄砲の伝来に伴って、伝統的な甲冑とは全く面目を異にする、いわゆる当世具足が出現すると、①も、前立物や形状自体に、自己を顕示する独自の意匠が凝らされるようになる。伊達政宗の三日月型の前立や、徳川家康の大黒頭巾兜などはそれである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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