入間川(読み)いるまがわ

精選版 日本国語大辞典 「入間川」の意味・読み・例文・類語

いるま‐がわ ‥がは【入間川】

[一] 埼玉県南西部の川。秩父山地の妻坂峠を源とし、川越市東部で荒川に合流する。上流部は名栗川とも呼ばれる。全長約六五キロメートル。
太平記(14C後)一〇「武蔵上野両国の勢六万余騎を相副(そ)へて、上路より入間(イルマカハ)へ向けらる」
[二] 狂言。入間川にさしかかった大名が、物事を反対にいう入間詞を聞いておもしろがり、衣服や太刀などを与えるが、最後に、その入間詞で欺き、持物を取り返す。三大名物(だいみょうもの)の一つ。

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デジタル大辞泉 「入間川」の意味・読み・例文・類語

いるま‐がわ〔‐がは〕【入間川】

埼玉県南部を流れる川。秩父山地妻坂峠付近に源を発し、川越市で荒川に合流。長さ65キロ。上流部は名栗なぐり川ともよぶ。
狂言。大名が入間川を渡る際、土地の者の入間ことばをおもしろがって持ち物を与えてしまうが、最後にそれを逆用してまんまと取り戻す。

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日本歴史地名大系 「入間川」の解説

入間川
いるまがわ

外秩父山地の入間郡名栗なぐり村に発し、川越市・大宮市境で荒川に合する荒川水系第一の支流。上流を名栗川ともよぶ。幹川の流路延長は六七キロ余、流域面積は七二〇平方キロ余の一級河川。飯能市内で東京都青梅市から流下する成木なりき川を合せ、川越市・比企郡川島かわじま町境で越辺おつぺ川が合流している。越辺川は上流に高麗こま川・都幾とき川という支流をもち、いずれも外秩父山地に水源がある。入間川の流域面積のうち山地の占める割合は全体の六四パーセント強で、荒川水系全域と比較しても高い割合となっている。また本・支流とも山地を流下したあと、流域に多くの丘陵・台地をもっているのが特徴であり、平地は荒川に合流する付近のわずかな地域しかない。流域の主要丘陵・台地には、川越台地・入間台地(毛呂台地・坂戸台地・飯能台地)・東松山台地・岩殿いわどの丘陵・高麗丘陵加治かじ丘陵などがある。なお寛永六年(一六二九)の荒川瀬替え以前は独立水系で、入間郡菅間すがま(現川越市)の地先から南東に流れ、蛇行しながら比企郡との郡界をなして下老袋しもおいぶくろ(現川越市)に至り、以後は現荒川の流路を流れて利根川に合流していたが、この瀬替えで下老袋から下流が荒川の本流となったため荒川の支流と化した。その後延宝八年(一六八〇)の川越藩主松平信輝による河道付替工事により足立郡平方ひらかた(現上尾市)の地先で荒川に合することになった。

〔中世文芸に描かれた入間川〕

呼称は主として入間郡域を流れることから生じたとみられる。呼称がみえる早い例は「吾妻鏡」元暦元年(一一八四)四月二六日条で、源義仲の嫡男志水(清水)冠者義高が源頼朝の放った追手により「入間河原」で討たれたとある。入間河原は鎌倉街道上道に近い現狭山市域と考えられる。「発心集」の「武州入間河沈水の事」は「武蔵国入間河のほとりに、大きなる堤を築き、水を防きて、其の内に田畠を作りつつ、在家多くむらがり居たる処ありけり、官首と云ふ男なん、そこに宗とあるものにて年比住みける」と書き始められ、大雨が続き水が「いかめしう出でたりける」にもかかわらず、「未だ年比此の堤の切れたる事なければ」と軽視したため、氾濫に遭い妻子を捨てて逃げた話が語られている。

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改訂新版 世界大百科事典 「入間川」の意味・わかりやすい解説

入間川 (いるまがわ)

埼玉県の南西部を流れる荒川最大の支流。全長67.3km,秩父盆地と境する妻坂峠(標高約800m)に源を発する。飯能市の旧名栗村を経て同市の岩根橋までの上流部は,名栗川と呼ばれていたが,最近は入間川の名で統一されている。上流部は秩父山地の谷間で,杉,ヒノキを中心とする西川材の産地である。それらの植林と伐採,いかだによる飯能への流送は,名栗や原市場などの集落が畑作のかたわら営んできた。飯能市街で山地を離れ,成木川を合わせてからは,茶畑,桑畑を交えた広い台地間に連なる沖積平野上を,ほぼ直線状に川越市に向かう。東岸に連なる武蔵野台地のへりには,1960年ごろから工場や住宅地が急増した。沖積平野には水田が多く,東武東上線付近には条里の遺構がある。川越市北西端で小畔(こあぜ)川,越辺(おつぺ)川を合わせ,市街地の北方を大きく迂回した後,古谷本郷の上江橋付近で荒川に合流している。かつて荒川の本流が現在の元荒川の流路であった江戸初期には,入間川はそのまま本流となって東京湾へ注ぎ,重要な舟運路であった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「入間川」の意味・わかりやすい解説

入間川
いるまがわ

埼玉県南西部,秩父山地から関東平野を流れる川。荒川の支流。全長 65km。秩父山地の妻坂峠周辺一帯を水源とし,飯能市の東部で関東平野に入り,高麗川,越辺 (おっぺ) 川を合せ,川越市東部で荒川に注ぐ。寛永6 (1629) 年の荒川の瀬替え工事までは,入間川は単独で現在の荒川の流路をとっており,江戸時代は西川材を江戸に送る水路でもあった。飯能より上流部は名栗川といわれ,名栗渓谷は東京近辺のレクリエーション地域。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「入間川」の解説

入間川
いるまがわ

歌舞伎浄瑠璃の外題。
初演
寛文11.7(江戸・松平大和守邸)

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