八女(市)(読み)やめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「八女(市)」の意味・わかりやすい解説

八女(市)
やめ

福岡県南部にある市。1954年(昭和29)福島町が川崎、忠見(ただみ)の2村と岡山村の一部を編入、市制施行と同時に八女市改称。2006年(平成18)、八女郡上陽町(じょうようまち)を編入し、2010年、同郡黒木町(くろぎまち)、立花町(たちばなまち)、矢部村(やべむら)、星野村(ほしのむら)の2町2村を編入。北部に耳納山地(みのうさんち)の山々、東部の大分県境には御前(ごぜん)岳(1209メートル)、釈迦(しゃか)岳(1231メートル)など、南部の熊本県境には三国(みくに)山(994メートル)をはじめとする筑肥山地(ちくひさんち)の連山がそびえる。東部に発した矢部川、その支流星野川が西に流れ、中央部西寄りで合流、合流地の下流部に発達した扇状地に中心市街が形成されている。南北に通じる国道3号と、東西に走る442号が幹線道路で、西端に九州自動車道八女インターチェンジがある。中心集落の福島は江戸時代、城下町起源の市場町として栄え、現在でも八女地方の中心である。江戸時代初期の町人地は、後に在郷町として発展し、現在でも当時の町割や江戸時代末期に普及した塗屋造の主屋を残している。これらの町並は2002年(平成14)に重要伝統的建造物群保存地区に選定された。星野地区では天文年間(1532~1555)に金山が発見され、大正年間に最盛期を迎えたが、第二次世界大戦後に閉山となった。主産業は農林業で、米のほか、ナシ、ブドウ、イチゴ、キウイフルーツ、トマト、茶、花卉(かき)などを産し、スギ、ヒノキ材や竹材も特産である。矢部川中流域の丘陵は県営パイロット茶園などの茶畑が広がる八女茶生産の中心地で、忠見は日本有数の電照ギク産地でもある。農家の副業的伝統産業も盛んで、福島の仏壇・提灯(ちょうちん)(国指定伝統的工芸品)、長野の石灯籠(どうろう)、柳瀬(やなぜ)の手漉(す)き和紙などが有名である。磐井の墓(いわいのはか)と伝えられる岩戸山古墳(いわとやまこふん)をはじめ、同じく八女古墳群として国指定史跡となっている乗場古墳(のりばこふん)、茶臼塚古墳(ちゃうすづかこふん)、丸山塚古墳(まるやまづかこふん)、丸山古墳の各古墳があり、それら古墳から出土した石人・石盾(せきじゅん)などの国重要文化財が岩戸山歴史文化交流館に展示されている。福島城跡の八女公園、八女地方の伝統工芸や文化財を紹介する八女伝統工芸館などがあり、福島八幡宮の灯籠人形は国指定の重要無形民俗文化財である。1960年(昭和35)、矢部川に日向神ダム(ひゅうがみだむ)が竣工し、日向神峡などの景勝地はその趣を一変させたが、ダム周辺はサクラの名所として知られ、矢部川県立自然公園の中核的な観光地となっている。星野地区では大正年間頃より玉露の生産が本格化、八女星野玉露として名を馳せた。面積482.44平方キロメートル、人口6万0608(2020)。

[石黒正紀]

『『八女市史』全3巻(1992・八女市)』


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