其処・其所・其(読み)そこ

精選版 日本国語大辞典 「其処・其所・其」の意味・読み・例文・類語

そ‐こ【其処・其所・其】

〘代名〙
[一] 他称。
① 相手側の場所、もしくは話題の場所をさし示す(中称)。そのところ。その場所。
古事記(712)上「其地(そこ)に宮を作りて坐(ま)しき
平家(13C前)九「海へうちいれ給ひたりけれ共、そこしもとをあさにてしづむべきやうもなかりければ」
② 相手側の事物、もしくは話題の事物をさし示す(中称)。そのこと。その点。それ。
※古事記(712)中・歌謡「苛(いら)なけく 曾許(ソコ)に思ひ出 愛(かな)しけく ここに思ひ出」
※中華若木詩抄(1520頃)上「しかれども此の詩にをいては妙也。そこが作者のうで也」
③ その情況。その事態。
※華々しき一族(1935)〈森本薫〉一「『須貝さんが、妾を嫌ひだったら、妾だって嫌ひだわ』『まだそこ迄は行ってないさ』」
④ 不定の場所をさし示す(不定称)。どこそこ。
万葉(8C後)一七・三九二四「山のかひ曾許(ソコ)とも見えずをとつひも昨日も今日も雪の降れれば」
[二] 対称。同等または同等以下の親しい相手に対してふつう用いる。そなた。そこもと。そち。
※宇津保(970‐999頃)あて宮「あまたものし給へど、中将とそことをこそは、宮にも上ゆるされなどし給へれば」
[語誌](二)の対称を表わす人称代名詞としての用法平安時代から鎌倉時代にかけて多く見られるが、室町時代以降はほとんど見られなくなる。「そち」「そなた」「そのほう」「そこもと」などがこれに取って代わったと考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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