出水(市)(読み)いずみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「出水(市)」の意味・わかりやすい解説

出水(市)
いずみ

鹿児島県北西部、熊本県境に位置する市。1954年(昭和29)出水町と米ノ津(こめのつ)町が合併して市制施行。同年大川内(おおかわうち)村を編入。2006年(平成18)出水郡野田町(のだちょう)、高尾野町(たかおのちょう)を合併。南は出水山地、北は八代海(やつしろかい)に臨み、三角州や干拓地が広がる。JR九州新幹線、肥薩おれんじ鉄道(ひさつおれんじてつどう)、国道3号、328号、447号、504号が通じる。また、南九州西回り自動車道の阿久根(あくね)インターチェンジと出水インターチェンジ間が開通している。歴史が古く、縄文弥生(やよい)時代の遺跡が多い。古代の書物には出水郡あるいは和泉(いずみ)郡と記されており、加紫久利神社(かしくりじんじゃ)は延喜(えんぎ)式内社。中世、和泉氏領から島津氏領となり、一時(1593~1598)豊臣(とよとみ)秀吉直轄領。肥薩国境に面し重要な位置を占めるため、島津氏は麓(ふもと)(外城(とじょう))を武本に置いたほか、周囲8か所にも設置し、野間(のま)の関所を中心に北辺の防御にあたらせた。麓は武家屋敷の景観をいまも残し、1995年(平成7)12月に重要伝統的建造物群保存地区に選定された。産業はおもに農業で、米、ミカン、タバコ、苗木の栽培に特色があるほか、畜産も盛んである。なお、八代海沿岸の干拓は元禄(げんろく)年間(1688~1704)以降に行われたもので、1965年には干拓地の総面積は約1500ヘクタールに及び、県内有数の穀倉地帯である。水産は沿岸、沖合漁業、ノリの養殖が盛んであり、クルマエビが特産。港は米ノ津川河口の名護(なご)と、藩米の積出し港として栄えた米ノ津がある。干拓地の荒崎一帯はツルの渡来地(ナベヅル、マナヅル、クロヅルなど約1万羽)として有名で、特別天然記念物になっている。また、湯川内(ゆがわち)や白木(しらき)川内などの温泉もある。面積329.98平方キロメートル、人口5万1994(2020)。

[平岡昭利]

『『出水郷土誌』(1968・出水市)』


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