分・訳(読み)わけ

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (動詞「わける(分)」の連用形の名詞化)
[一] 分割・分配すること。
① 分けること。分配。
※良寛歌(1835頃)「自今以後納所(なっしょ)は君にまかすべし二合三合はわけのよろしき」
② 食べ残しの食物。食い残し。また、供物のおさがり。また、食べ残すこと。
※足利本人天眼目抄(1471‐73)下「此鉢にくさった様なる飯汁のわけなんどを著けぬぞ」
※狂歌・徳和歌後万載集(1785)一五「けふは又はきだめ山に蒲鉾のわけをすてたる祇園会の跡」
③ 芸娼妓などが、そのかせぎ高を抱え主と半々に分けること。また、その芸娼妓。
※浮世草子・好色一代女(1686)六「分(ワケ)とは其花代宿とふたつに分るなるべし」
④ (③から転じて) 花代が五分(一匁の半分)の端女郎の称。そろり。北むき。分女郎。
※浮世草子・御前義経記(1700)一「端女郎は鹿恋より下、みせ女郎といふなり。〈略〉位は一を壱寸とも、月ともいふ。〈略〉又五を五歩ともわけ共北むき共そろりともいへり」
⑤ 勘定。支払い。
※浮世草子・好色二代男(1684)二「当座払に万(よろづ)ケ様の分(ワケ)ぞかし」
⑥ 村中の小区分。
※日本国郡沿革考(1878)一(古事類苑・地一)「一村中、亦因民之所群処区別、俗称之為字、或小名、履之以組、曰某組又曰某坪・某分」
⑦ 相撲などで、勝負が決まらずひきわけること。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸山、梅ケ谷時代の壮観「初日には小結の源氏山に敗れ、二日目には関脇の朝汐と分を取り」
[二] (「訳」と書くことが多い) 物事を判断すること。また、その判断した内容。
① 物事の違いなどを判別すること。区別。違い。
※中華若木詩抄(1520頃)中「乱世にならでは、君子小人のわけは、見へぬぞ」
② 事柄やことばなどの意味・内容。
※玉塵抄(1563)一〇「孟徳初は中聖のわけをしらいで疑うたぞ」
③ 物事の道理。すじみち。わけみち。→わけが立つ①。
※日葡辞書(1603‐04)「Vaqega(ワケガ) キコエヌ、または、キコエタ〈訳〉物事がよく理解できない、または、物事がよく理解できてはっきりした」
④ 事情や理由。物事の原因やいきさつ。
※虎寛本狂言・素襖落(室町末‐近世初)「ちと申受にくい訳が御座る」
⑤ 特に、情事やそのいきさつ。また、色の道に通じていること。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「太鞁女郎にも大形成(おほかたなる)わけは見ゆるし」
⑥ 遊里の慣習や作法。
※浮世草子・好色貝合(1687)下「酒のはづみと床入の分(ワケ)、大助べいか実のなき手なれば、分て、時行(はやる)事也」
⑦ 活用語の連体形を受けて「…わけだ」「…わけである」「…わけです」「…わけじゃ」などの形で用いる。
(イ) 事情や理由にもとづいて、当然のことと納得できる気持を表わす。→わけが無い④。
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九「ああいふ奴が本校に居っては、到底(つまり)本校の体面を汚す道理(ワケ)じゃ」
(ロ) 事の成り行きやいきさつを説明してその結果や結論を示す。→わけには行かぬ
※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉六「さうすればこんな面倒な会議なんぞを開く必要もなくなる訳だ」
⑧ 下に打消を伴って「…するわけでは(も)ない」「…するわけのものでは(も)ない」の形で用いる。
(イ) 常識的に考えて、よくない、ありえないの意を表わす。
※落語・樟脳玉(下の巻)(1891)〈三代目三遊亭円遊〉「各自(めいめい)の量簡丈にしきゃア出来る訳のものぢゃ御座いません」
(ロ) 事実や事情がそうではない、の意を表わす。
※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一「金を三円許り貸してくれた事さへある。何も貸せと云った訳ではない」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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