利子配当課税(読み)りしはいとうかぜい

改訂新版 世界大百科事典 「利子配当課税」の意味・わかりやすい解説

利子・配当課税 (りしはいとうかぜい)

利子所得配当所得に対する課税を指す。利子所得とは,公債社債預貯金の利子だけでなく,合同運用信託の利益と公社債投資信託の収益の分配を含む。また配当所得とは,法人から受ける利益の配当だけでなく,建設利息の配当,剰余金の分配および証券投資信託(公社債投資信託を除く)の収益の分配を含む。

 第2次大戦後の税制の出発点とされるシャウプ税制(1950)では,あらゆる所得の総合課税主義が徹底して貫かれ,近代的所得税制が確立された。しかしその後,利子所得源泉分離課税(1953以降),配当所得源泉選択課税(1965以降),さらには国債大量発行とともに国債利子別枠非課税(1968以降)が実施されて,総合課税の建前が崩されるに至った。これまで数々の変遷があったにせよ,利子や配当という資産所得が分離課税という優遇措置を受け,少額貯蓄利子の非課税制度(いわゆるマル優,特別マル優,郵便貯金)が設けられた(〈少額貯蓄非課税制度〉の項参照)のも,貯蓄奨励という名分によるものであった。しかし,このような貯蓄奨励策が,国民生活の保護というより産業資金の確保による経済成長促進のためであり,低貯蓄者よりも高貯蓄者にはるかに有利なシステムであることから,税の公平と衝突するという批判があった。給与所得なら最高で75%の累進税率がかけられるのに,利子・配当なら最高でも35%ですむのは,不公平税制の典型ではないか,という批判である。この批判にこたえて総合課税に移行するためには,アメリカで採用されている納税者番号制度が最も有効とされ,日本でもグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)制の導入が図られたことがあった。

 その後1987年の改正により,少額預貯金の利子の非課税制度が原則的に廃止(老人等に係る利子所得については非課税)され,利子課税制度の見直しがなされた。なお,97年現在,利子所得は,所得税法上,総合課税の対象とされているが,特別措置として,すべて他の所得と分離して一律に比例税率(15%。住民税を合わせて20%)で課税することとされており,しかも分離税率と同じ税率で源泉徴収を行うこととされているので,利子所得に対する課税は,源泉徴収によって完了することになった(一律源泉分離課税という)。また配当所得も利子所得と同様,源泉徴収の対象となる。原則として総合課税の対象となるが,納税者は,一定の条件のもとに,一定範囲の配当所得について源泉分離課税を選択することができる。
分離課税
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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