副腎皮質刺激ホルモン(読み)フクジンヒシツシゲキホルモン

デジタル大辞泉 「副腎皮質刺激ホルモン」の意味・読み・例文・類語

ふくじんひしつ‐しげきホルモン【副腎皮質刺激ホルモン】

脳下垂体前葉から分泌され、副腎皮質の分泌機能を促進するホルモンACTHアクスadrenocorticotropic hormone)。コルチコトロピン

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精選版 日本国語大辞典 「副腎皮質刺激ホルモン」の意味・読み・例文・類語

ふくじんひしつ‐しげきホルモン【副腎皮質刺激ホルモン】

〘名〙 (ホルモンはHormon) 脳下垂体前葉から分泌されるホルモン。副腎皮質の形態を維持し、副腎皮質ホルモンの分泌を調節する。白色粉末として抽出され、関節炎リウマチ熱などの治療剤に用いる。副腎刺激ホルモン。ACTH。

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内科学 第10版 「副腎皮質刺激ホルモン」の解説

副腎皮質刺激ホルモン(下垂体前葉ホルモン)

(1)副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hor­m­one,adrenocorticotropin,corticotropin:ACTH)
a.化学構造と生合成
 ACTHはACTH分泌細胞から分泌される39個のアミノ酸残基からなるペプチドホルモンであり,分子量約30000のプロオピオメラノコルチン(proopiomelanocortin:POMC)とよばれる前駆体から切断されて生じる(図12-2-5).このPOMCのN端側からは糖鎖の結合したγ3-メラニン細胞刺激ホルモン(γ-melanocyte stimulating hormone:γ3-MSH)が,C端側からはβ-リポトロピン(β-lipotropin,β-LPH)や,さらにβ-LPHが切断されてβ-エンドルフィン(β-endorphin)が生じる.
b.作用
 ACTHは細胞膜を7回貫通するG蛋白質共役型受容体に結合し,アデニル酸シクラーゼ活性化,cAMP産生亢進,プロテインキナーゼAの活性化を介してその作用が生じる.副腎皮質束状層と網状層に作用し,コレステロールをもとにコルチゾールと副腎性アンドロゲンの合成・分泌を促進するが,生命維持に必須であるコルチゾールの合成・分泌の促進作用が最も重要である.ACTHはアルドステロンの分泌も刺激するが,その生理的意義は明らかでない.ACTHには弱いながらメラニン細胞刺激作用があり,過剰分泌が慢性的に持続すると皮膚,粘膜などに色素沈着が生じる.
c.分泌調節
 おもな分泌調節因子は,日内変動,ストレス,負のフィードバックである.ヒトの日内変動は早朝時に最も高く,夕方から夜間にかけて分泌が低下する.ストレス時には視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin releasing hormone: CRH)を中心に,バソプレシンも加わりACTHの分泌が促進される(図12-2-4).ACTH分泌亢進により血中濃度が高まったコルチゾールは視床下部と下垂体に作用し,CRHとACTHの合成・分泌を抑制する.[芝﨑 保]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「副腎皮質刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

副腎皮質刺激ホルモン
ふくじんひしつしげきほるもん
adrenocorticotropic hormone

下垂体前葉から分泌され、副腎皮質に働いて副腎皮質ホルモンの生合成と分泌を促すホルモンをいい、略してACTHとよぶ。生体に不安緊張、外傷や手術による痛みなどの肉体的・精神的ストレスがかかると、ACTHが分泌され、その結果として副腎皮質ホルモンの分泌が促されて、それらのストレスから身を守るように働く。ACTHは、下垂体前葉に存在するACTH産生細胞で合成され、分泌される。39個のアミノ酸が直線的につながったポリペプチドで、分子量は約4500である。ACTHの副腎皮質刺激作用は、ACTH分子のN端から1~18位のアミノ酸の部分に存在する。19~39位までのアミノ酸は、ACTHの不活性化を防ぐ働きと、ACTHの抗原としての働きがある。また、ACTHには黒色素胞刺激作用があるが、これはACTHのN端側の1~13位にα‐MSH(黒色素胞刺激ホルモン)を含むためである。

 下垂体からのACTHの分泌は、視床下部の正中隆起に存在するACTH放出ホルモン(コルチコトロピン放出ホルモン、略してCRH)によって調節されている。下垂体から血液中へ放出されたACTHは、ヒトの場合約9分でその生物活性が半分に減少する。ACTHは副腎皮質の細胞を刺激して糖質コルチコイドを分泌させる。血中の糖質コルチコイド濃度が高くなると、ACTHの分泌を抑制するように働く。逆に血中の糖質コルチコイド濃度が低くなると、ACTH分泌を刺激するように働く。このような調節の仕組みをネガティブ・フィードバック機構とよぶ。ACTH分泌には、ストレスに対するときのほか、日内でのリズムがあり、ヒトでは朝の起床直後に血中濃度が最高となり、夕方から就寝時にかけて最低となる。深夜労働者とか夜行性の動物では、逆に夕方目覚めるころに血中ACTH濃度が最高になり、朝の就寝時に最低となる。この日内リズムは、視床下部からのACTH放出因子の日内リズムによるもので、末梢(まっしょう)血中の糖質コルチコイドの濃度の変化には無関係である。

[小林靖夫]

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栄養・生化学辞典 「副腎皮質刺激ホルモン」の解説

副腎皮質刺激ホルモン

 コルチコトロピンともいう.下垂体の分泌する39個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで,副腎皮質に作用してその増殖を促進し,副腎皮質ホルモンを分泌させる活性がある.視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンによって分泌が促進される.

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改訂新版 世界大百科事典 「副腎皮質刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

副腎皮質刺激ホルモン (ふくじんひしつしげきホルモン)

ACTH(エーシーティーエッチ)

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百科事典マイペディア 「副腎皮質刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

副腎皮質刺激ホルモン【ふくじんひしつしげきホルモン】

ACTH

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「副腎皮質刺激ホルモン」の意味・わかりやすい解説

副腎皮質刺激ホルモン
ふくじんひしつしげきホルモン

ACTH」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の副腎皮質刺激ホルモンの言及

【ACTH】より

…副腎皮質刺激ホルモンadrenocorticotropic hormoneの略。アクスともよみ,コルチコトロピンcorticotropinともいう。…

【脳下垂体】より


[前葉と前葉ホルモン]
 腺下垂体の前葉からは数多くのホルモンが分泌されるが,現在までに完全にわかっているものは6種類である。すなわち,成長ホルモン,プロラクチン,副腎皮質刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,卵胞刺激ホルモン,黄体形成ホルモンである。このほか最近の説ではリポトロピンエンドルフィン,エンケファリンも分泌されるという。…

※「副腎皮質刺激ホルモン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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